アガベの胴切り後の“天”&根がなかなか出ないときの発根管理~12個のコツ~

アガベに根を出させる

根がなくてもしばらくの間は生きることのできる植物を増やしたいとき、そしてカタチの崩れてしまった株を仕立て直したいときに用いられる、「胴切り」という園芸技術。

アガベは根がない状態でも、数か月から数年間は生きることのできる強い植物なので、「胴切り」はアガベに用いられることもあります。
釣り糸に用いられるテグスや刃物などを使用して、アガベを上下に真っ二つにすると、アガベを増やすことができるのです。

アガベの胴切り
  • 真っ二つにした上の部分(この上の部分を“天”と呼びます。)は、切断すると一時的に根がない状態になりますが、成長点は残っているので、根を出させることができれば、ひとつの個体として育てることができます。
  • 一方の下の部分は、成長点は真っ二つにした上の方にあるため、成長点がなくなっている状態に・・・。
    この株自体はそれ以上の成長ができなくなりますが、まだ生きている状態なので、自らが成長できなくても、自分の子孫を残そうとして新たに子株を吹きやすくなります。

以上のことから、「胴切り」がうまくできれば、同じ遺伝子をもったアガベを増やすことができる仕組みです。

アガベの「胴切り」については、下記の記事で詳しく書いているので、ご興味があればお読みください。

本記事では、「胴切り」を行ったあとの“天”の発根管理について、書いていきます。
“天”に限らず、発根管理をしていても、なかなか根を出さないアガベもいますが、いずれにしても発根管理に苦戦したときにお読みいただきたい記事となっています。

目次

アガベの“天”の発根管理

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この「胴切り」について、もっとも気を張るときは、愛情をもって育ててきた大切なアガベにテグスや刃物を入れていくときですが、もっとも根気強さが必要になるのは、切ったあとの“天”の部分の発根管理です!

直近で根が生えてくる予定のなかった部分から、新しく根を出してもらう必要があるため、時間がかかって当たり前といえば当たり前ですが、根が出ないときはいくら待てど暮らせど、本当に発根しないです。

胴切りによって新しく吹いた子株が、発根した様子

そういったときには、どうすればいいのか!?
本記事で、詳しく解説していきます。

発根を促す12個のコツ

アガベの“天”の発根は、コツが12個あると感じています!

同様に、なかなかアガベが根を出さないときにも、同じコツが当てはまるので、ひとつずつご紹介していきます。

①:下葉を取りすぎない

まず、一つめのコツは「下葉を取りすぎない」ことです。

下の写真をご確認いただければ分かりますが、アガベが発根してくるときは、下葉のつけ根の付近から発根してきます。

発根管理から5カ月で、ようやく発根したアガベの天の部分

胴切りをした直後は、“天”の部分に根を出してもらうことを優先して、新しい組織を出すために天の部分の下葉を取りすぎてしまいがちですが、ここは注意が必要なところ

“天”の部分の下葉を取ると葉のつけ根が剥き出しになり、新しい組織が出てくるので、たしかに発根確率を上げることができますが、“天”から下葉を取った分だけ“天”の体力が削られることにもなるため、古くなった下葉を必要以上に取らないことが重要です。

“天”の発根管理は、長期戦になることが前提となるので、アガベの体力を無駄に消費させないことが必要となります。

ただし、まったく下葉をとらないと発根を促すことにつながらないので、「胴切り」の最中に傷ついてしまった葉やよれよれになった下葉を数枚ほど取るのは、その後の発根管理に良い効果を与えます。

数週間から数か月もの間アガベが発根しないと、胴切り直後のように新しい組織が表に出なくなるもの。
そういったときに新しい組織を出すときは、ムリに下葉を取るのではなく、カッターやハサミの先端部分を使用して、下葉のつけ根付近の組織を少し削り取る方法が有効に働くでしょう。

新しく組織を出したあとは、風通しの良い環境で1~2週間ほどしっかりと乾燥させることで、失敗するリスクを下げることができます。

②:消毒を徹底する

二つめのコツは、「消毒を徹底する」ことです。

胴切りをした切断面は、アガベの組織がむき出しの状態となっています。
傷口から雑菌が入らないように、傷口の消毒をしてから1~2週間程度、乾燥させます。
乾燥させる場所は、風通しのよい日陰が望ましいでしょう。

ここで重要なのは、焦らないこと
株の大きさにもよりますが、胴切りをするぐらい大きなアガベは、数カ月根がなくても枯れないぐらい丈夫です。
1~2週間ぐらいロスしても、たいした影響はありません。

自宅では消毒に際し、下記のスプレータイプのモノを使用しています。
消毒だけではなく殺虫機能も備えているためで、ひとつ持っておけば、ほかの場面でも活躍できる応用の効く園芸資材といえるでしょう。

③:水の量に気をつける

三つめのコツは、「水の量に気を付ける」ことですが、この項目は、「水耕」での管理、そして「水苔」を使用した管理に当てはまる項目です。

アガベを水を溜めた容器に入れて発根を促す「水耕(すいこう)」や、濡らした水苔を使用して発根管理をする場合、株の上の方まで水に入れる必要はありません。

新しく根が出てくる部分(下葉の付け根)がつかる程度の位置で発根管理をします。

アガベを、不必要に深い位置まで水につけてしまうと、株が腐ってしまう原因になりかねません。

長期的に「水耕」や「水苔」で管理していると、水が蒸発して水位が下がることがありますが、蒸発を見越して最初から水を多めに入れておくと、リスクを高めてしまことにも。

「水耕」の場合でも「水苔」の場合でも、水は多すぎず少なすぎずを意識することが重要です

④:水の鮮度と水温に気をつける

そして、四つめのコツは、「水の鮮度と水温に気をつける」ことです。

「水耕」の場合でも「水苔」を使用した管理の場合でも、土に植えて発根を促す「土耕(どこう)」の場合であっても、ほとんどの場合は水道水を使用することになるでしょう。

水道水を使用する場合には、2~3日おきに交換することが重要です。
「土耕」の場合には、いつまで経っても乾きづらい土を使用すると、土の中で雑菌が繁殖してしまうことにもつながります。
発根管理に使用する土は、ひゅうが土や赤玉土をベースにして、水はけの良さを最優先に考えた方が良いです。

また、水温にも注意をしたいところ。
あまり冷たすぎる水を使用すると、水温の低さから発根を阻害してしまう原因にも。
発根管理に使用する水は、水道水をそのまま使用するのではなく、一日ほど常温の室内に置いた水を使用することで、発根を促すことができます。

⑤:適温を保つ

つづいて、五つめのコツは、「適温を保つ」ことです。

アガベは、メキシコなどの地域で暮らしていて暖かい環境を好む植物なので、発根に適した温度は25℃前後です。

アガベの発根管理を行っている環境が、25℃前後であれば、そのまま発根管理を行えば良いですが、適温を保てない季節は、対策が必要となるもの。
具体的な対策としては、なるべく適温を保てるように置き場所を工夫したり、植物用のヒーターマットなどを使用したりすることで、適温を保ちやすくなるでしょう。

また、アガベが根がない状態であっても、なかなか枯れない植物であることから、冬になり気温が下がってきたタイミングで発根できていないのであれば、春まで発根管理をせず、暖かくなってから発根管理を開始するひともいます。
根がない状態の方が寒さに強くなるので、耐寒対策としても有効な方法ですが、長期的に根がない状態のアガベを見るのは、なかなか酷と感じるひともいるので、春まで待つことは考え方次第だといえます。

⑥:風通しを良くする

六つめのコツは、「風通しを良くする」こと。

自然の中では、空気の流れがまったくない環境は、なかなか存在しません。

アガベに根を出してもらうには、「この環境だったら、生きていける」とアガベに思わせることが必要です。

アガベは葉だけではなく根でも呼吸をしている生き物なので、呼吸をするために風通しは最低限必要なもの。
特に室内で発根管理をする場合には、風通しの良い場所で自然の中の環境を再現することが望まれます。

室内で発根管理を行うのであれば、空気の流れをつくり出すことのできるサーキュレーターを使用した方が良いですが、サーキュレーターを使用する場合には、アガベに直接強い風を当てるというよりも室内の空気を循環させることを意識しましょう。

⑦:ガーデニング用品を重要視しすぎない

つづいて、七つめのコツは、「ガーデニング用品を重要視しすぎない」こと。

植物の発根を促す際によく使用されるガーデニング用品として、「ルートン」、「メネデール」、「オキシベロン」などが知られていますが、“この用品を使用したら絶対に発根する”用品は、残念ながら存在しません。

どのガーデニング用品を使用するかということよりも、気温や風通しなどの条件面をどうやって整えるかといったことの方が、よっぽど重要です。
もちろん、可能であればプラスαの要素として、発根を促すことのできるガーデニング用品を使用した方が望ましいですが、ガーデニング用品に頼り過ぎると、それ以外の発根を促す作業がおろそかになってしまうことにも。

自宅では発根を促す用品を使用せずにしばらく発根管理に取り組み、1~2か月のあいだ発根する兆しが見えないときに、はじめて発根を促す用品を使用しています。

アガベの発根管理は「オキシベロン」を使用しているひとが多い印象を受けますが、自宅では「メネデール」を使用すること
が多いです。
以前は「オキシベロン」を使用していたこともありましたが、環境面の管理の方が重要だと感じたので、植物の発根管理だけではなく、その後植物を育てていく際に液体肥料とあわせて活力剤としても使用できる「メネデール」に、今は落ち着いたところです。

⑧:ガーデニング用品の用法容量は守る

八つめのコツは、「ガーデニング用品の用法容量は守る」こと。

アガベは、しばらく根がない状態でも生きられる“強い生き物”です。

強い刺激を与えれば発根するというワケではないので、何週間、何カ月と発根をしなくても焦らないことが重要です。
もしも、ガーデニング用品を使用する場合には、用法容量を守り、必要以上に使用しないようにします。

必要以上に使用してしまうと、逆に株にダメージを与えてしまうことになり、株が腐ってしまうなどの原因などにつながってしまうことにも。

発根していない状態でも継続してチャレンジをすることはできますが、株が腐ってしまっては発根を促すこともできません。
“継続は力なり”です。
ときにはじっくりと時間がかかることがあっても、あきらめずに根を出させてあげましょう。

⑨:ヌルヌルした物質は取り除く

この項目から、ある程度の長期戦を見据えたコツに差しかかります。
九つめのコツは、「ガーデニング用品の用法容量は守る」こと。

「水耕」や「水苔」で発根管理する場合、定期的に水を取り替えるのはもちろんですが、水を入れている容器やアガベが水に浸かっている部分に、ヌメりけが発生する場合があります。

このヌメりけは、必要以上にゴシゴシと落とす必要はありませんが、軽く手で水洗いをしてヌメりけを取り除くことが望まれます。

このヌメりけのある物質は、植物は自らの組織を守るために意図して分泌している物質ですが、アガベの発根を阻害してしまうことにも。

ほかの植物のタネにもヌメりけがある物質が付いていることがありますが、この成分でタネを覆うことにより一定期間は発芽を抑制させています。

毎日のようにヌメりけがついていないかチェックする必要はありませんが、1~2週間に1度はヌメりけを落とす、または防止する目的で、株や容器を水洗いすることがオススメです。

⑩:直射日光に当てない

そして、十個めのコツは、「直射日光に当てない」こと。

当然ですがアガベの“天”には根がないので、本来成育していくにあたり必要な水分が、吸水できていない状態になっています。

この状態で直射日光に当ててしまうと、体温を調整するために葉から水分がどんどん体の外に出ていってしまうため、すぐに萎れてしまうことになるでしょう。

ひとでいうと、暑くて汗をかいているのに水分補給ができない状態に陥ってしまうので、屋外で発根管理を行うのであれば直射日光の当たらない日陰に、そして室内で発根管理を行う場合でも、窓から差し込む強い光や植物育成用LEDなどの強い光は当てないようにします。

発根できていない中で成長を促すことは逆効果になるので、アガベに成長を促すのは、発根管理が完了してからです。

⑪:定期的にリセットする

そして、十一個めのコツは、「定期的にリセットする」こと。

アガベからまったく発根をする気配が感じられない場合には、一度発根管理をやめて、ヌメりけを取り除いた上で乾燥させることが望まれます。
このときに、消毒液や発根を促すガーデニング用品があるのであれば、あらためて塗布します。
また、アガベの葉の付け根に新しい組織が出ていないのであれば、刃物で少し葉の付け根の部分を傷つけることも有効に働くでしょう。

その後、1~2週間程度乾燥させてからあらためて発根管理を行うと、株が腐ってしまうリスクを軽減させることができ、発根管理を行っている側もマンネリ化した状態から脱することができるので、心機一転、発根管理に取り組むことができます。

このときに、新しい組織を出さないのであれば、乾燥する期間は3~4日でも充分です。

自宅で、リセットする目安の期間は、2週間~1か月の周期で行っています。

⑫:変化を付けて、刺激を与える

最後のコツは、「変化を付けて、刺激を与える」こと。

アガベの発根管理には、「土耕」「水耕」「水苔」の3つがメジャーな方法として、知られています。

以前に、「水苔」を使用して発根管理をしたら1週間で発根した!
といった経験をしたことがあっても、その方法に固執する必要はありません。
株によっては、「水苔」でまったく発根しなかったけど、「土耕」に切り替えた途端に発根した!
なんてこともありますし、逆もしかりです。

また、発根管理方法を変えるだけではなく、気温を変えてみるだけでも、アガベに新しい刺激を与えることができます。
たとえば、ずっと25℃前後に保っている室内で発根管理をしていたのに、どうしても発根をしない場合には、10℃前後の寒い環境で乾燥させてから、また25℃前後に保った室内で発根管理をすることで、アガベに新しい刺激を与えることができるでしょう。

アガベが本来暮らしている地域の環境は、昼と夜で気温差が激しく、常に一定の気温に保たれているワケではありません。
過保護にしたくなる気持ちや、過去の成功体験に執着したくなる気持ちも分かりますが、メリハリをつけた発根管理をすることで、いち早く“アガベの発根”にたどり着けることになります!

発根管理のコツについては、以上です!

まとめ

本記事では“天”に焦点を当てて書いてきましたが、正直なところ発根管理方法は“天”に限ったことではなく、アガベの子株やベアルート株の発根管理にも同様のことが当てはまると思います。
要するに、“天”だからといって、特別に~をしなくてはならないということはありません。

アガベの子株には、発根管理を開始してから数日で発根する株もありますが、天は大体いつも長期戦に持ち込まれます。
ただ本記事で何度か触れてきましたが、たとえ数週間から数か月間水を吸えないからといって、すぐに枯れてしまう植物ではないのも事実。

いずれ必ず発根することを信じて、焦って必要以上に発根を促す管理をせずに、我慢比べのような長期戦に臨む心構えが重要です!

アガベが腐ってしまうと、それ以上の発根管理はできなくなってしまうことにもなるので、腐らせてしまうリスクを回避することは優先的に考えて、発根管理後のアガベの育成に進みたいところですね!

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