~胴切り後の‟天”にも~
しかし発根しないままでは、いずれ枯れてしまうため、適切な方法で「発根管理」をする必要があります。
特に、株を上下に切断する「胴切り」を行った後の上部(”天”と呼ばれる部分)は、カンタンに根が出るケースは稀で、発根管理に悪戦苦闘することも少なくないでしょう。
本記事では、アガベを確実に発根させるための17個のコツを、詳しく解説しています
長期間発根しないアガベでも、あきらめずに正しい管理をつづければ、根を出させることは可能です!
アガベの発根管理
発根管理とは?
いくら乾燥に強い植物でも、水分がまったく吸い上げられない期間が長くつづくと、いずれ枯れてしまうでしょう。
それはアガベも、例外ではありません。
発根管理が必要になる理由
アガベは大きく分けて、すでに根が生えている「発根株」と、根が生えていない「未発根株」が流通しています。
- 発根株
- 販売者側で発根管理をする分、未発根株と比べると販売金額は高い
- 未発根株
- 販売者側では発根管理をする必要がない分、発根株と比べると販売金額は安い
販売者側は在庫を抱える期間が短く済み、購入者側はリーズナブルに入手できるので、未発根株が多く流通しています
アガベの胴切りについては、以下の記事で詳しくご紹介しています
胴切り後の発根管理は、長期化する傾向がある
株分けした子株は1~2週間で発根することが多いですが、発根しづらい株は長期的に根を生やさないことも、めずらしくありません。
特に、「胴切り」を行った後の上部、‟天”の部分は発根しづらい特徴があります。
発根管理は「土耕」、「水耕」、「水苔」がメジャーな方法
アガベの発根管理は、以下の3つが、メジャーな方法として知られています。
- 土耕(どこう)
- 土に植え付け、発根を促す方法
- 水耕(すいこう)
- 容器に溜めた水に、株の根元を浸け込み、発根を促す方法
- 水苔(みずごけ)
- 水に浸した水苔に、株の根元を浸け込み、発根を促す方法

その他シナモンパウダーを塗布したり、水道水の代わりに炭酸水を使用したりする方法もありますが、効果は定かではありません…。
アガベを発根させる「17個のコツ」
長期的に発根しないアガベも、株が完全に枯れていない限りは、『発根しづらい』だけで『絶対に発根しない』わけではありません。
そのためアガベの発根管理を成功させるためには、株を腐らせない対策もする必要があります!
不要な根は取り除く(ベアルート株の場合)
メキシコやタイなどの海外から輸入した「ベアルート株」には、茶色く枯れ込んでいる根が、付いている場合があります。
茶色い根はすでに枯れているものが多く、土に植えても機能しません。
「土耕」で発根管理をする場合、根が多少付いている方が、株がグラつかなくなるでしょう。
ただし、機能しない根をそのまま付けていても、鉢内のスペースを余分に取るだけで、大きなメリットはありません。
逆に鉢内が不要な根で蒸れてしまい、根腐れの原因にも…。
下葉を取りすぎない(ベアルート株&胴切りの場合)
次の写真の通り、アガベ(天)が発根するときは、下葉のつけ根あたりから根を生やします。

発根管理開始から5か月目で、ようやく発根しました…。
葉を何枚か取ると、茎の部分がむき出しになるので、発根しやすくなる場合もあるでしょう。
ただし健康的な下葉を取った分だけ、株の体力が削られるので、下葉を必要以上に取らないことが重要です。
ただし無駄な下葉を取り除くことで、発根確率を上げられる
下葉を取りすぎないことは重要ですが、まったく下葉を取らないと、アガベがうまく根を出せない場合もあります。
下葉を取り除かなくても、茎の部分をむき出しにできる
いちど下葉を取り除き、茎の部分をむき出しにしても、長期的にアガベが発根しないと、茶色い組織で茎の部分が覆いつくされてしまいます。
茎の部分が表面に出ていないと、根が出てこれないので、あらためて茎の部分をむき出しにすることで、アガベの発根を促せます。
茎をむき出しにするのは下葉を取り除くのが、もっとも手っ取り早い方法ですが、その都度、下葉を取っていたら、株の体力を奪うことに…。
茎をむき出しにしたあとは、風通しのよい場所で1~2週間ほどしっかりと乾燥させることで、株が腐るリスクを下げられます。
徹底して殺菌する(胴切りの場合)
胴切りを行ったあとの切断面は、アガベの組織がむき出しの状態に…。
そのままの状態だと、傷口から菌が入り込む可能性があるので、殺菌を行い、その後1~2週間ほど乾燥させます。
株を乾燥させる場所は、風通しのよい屋外の日陰が望ましいです。
殺菌には園芸用品を使用する
殺菌剤として、さまざまな園芸用品が市販されています。
ただし必ずしも、ダコニール粉剤を使用する必要はありません。
また粉末タイプ以外にも、スプレータイプの殺菌剤も市販されています。
以下の園芸用品を使用することで、傷口の殺菌を行えます
- ダコニール粉剤
- ベンレート水和剤
- ベニカ(スプレータイプ)
大きめな園芸店やホームセンターを訪れると、殺菌剤がたくさん並んでいるので、その中から選んでみてもよいでしょう。
水量に気をつける(水耕&水苔の場合)
「水耕」や、水に浸した「水苔」を使用して発根管理を行う場合、必要以上に水を使用する必要はありません。
根を生やす部分が浸かっていれば、アガベの発根を促すことができます。
「水耕」や「水苔」で管理していると、水が蒸発し、水位が下がることがあります。
ただし蒸発することを見越して、最初から水を多めに溜めておくことは、オススメできません。
溜めている水は、2~3日おきに交換する
「土耕」「水耕」「水苔」いずれの管理方法でも、水道水を使用するケースが多いでしょう。
東京都水道局によると、『直射日光を避けて、常温で水道水を保存した場合、3日ほどは塩素の消毒効果が持続する。』ということ。
裏を返せば、4日目以降は、水道水の消毒効果が持続していない状態になります…。
「土耕」の場合も、水を溜めた容器に鉢ごと浸け込む「腰水」(こしみず)で管理する場合は、溜めている水を2~3日おきに取り替えることが望まれます。
水温に気をつける
アガベが快適に過ごせる温度は、20~30℃ほどと言われています。
日本では地域にもよりますが、真冬の水道水は10℃以下になっている場合も、少なくありません。
水温が低すぎると、アガベが快適に過ごせない状況になり、発根を阻害する原因にもなります。
夏はともかく、冬に発根管理に使用する水は、水道水をそのまま使用するのではなく、容器に溜めて一日ほど室内に置いた水を使用することで、発根に適した水温に近づけられます。
排水性&通気性のよい土を使用する(土耕の場合)
「土耕」で発根を促す場合、乾きづらい土を使用すると、土の中で雑菌が繁殖する原因になります
発根管理に使用する土は、「ひゅうが土」や「軽石」、「赤玉土」などの排水性&通気性に優れた土をベースにすることが基本です。
発根管理用ではなく、育成用の培養土については、以下の記事で詳しくご紹介しています
培養土のつくり方はひとそれぞれですが、よろしければ、ひとつの参考にしてみてください
適温を保つ
アガベは、メキシコなどの暖かい地域で自生しているので、発根に適した温度は20~30℃ほどです。
適温を保てる季節なら、そのまま発根管理を行えばよいですが、適温を保てない場合は対策が必要です。
具体的には、以下のような対策が挙げれます。
- 冷暖房が効いた室内で管理する
- 植物用のヒーターマットなどを使用する
- 園芸用のヒーター&簡易ビニールハウスを組み合わせて使用する
簡易ビニールハウスについては、以下の記事で詳しくご紹介しています
暖かい季節(春や秋)を待つという選択肢もある
アガベは根がない状態でも、しばらくは枯れないので、適温に調整するのではなく『暖かい季節を待つ』という選択肢も視野に入れられます。
- 春まで待つ
- 秋に差しかかり、最高気温が20℃未満の場合
- 冬にベアルート株を入手した場合 など
- 秋まで待つ
- 夏が到来し、最高気温が30℃を超えている場合
- 暑すぎても、アガベの成長が緩慢になり、発根しづらくなる
- 夏が到来し、最高気温が30℃を超えている場合
根がない状態のアガベを見るのは、酷だな…。
と感じるひともいるので、暖かい季節を待つことは、考え方次第かもしれません。
すでに発根しているアガベは、暑さや寒さ対策を講じながら、育てていく必要があります。
植物の暑さ対策や寒さ対策は、以下の記事で、それぞれ詳しくご紹介しています
【暑さ対策】
【寒さ対策】
風通しをよくする
アガベが根を出すためには、
この環境なら、生きていけそうだな
と、アガベに思わせることが必要です。
自然界には、空気の流れがまったくない環境は、なかなか存在しません。
アガベは、自然につくられる空気の流れの中で、「呼吸」をしています。
蒸れの防止だけではなく、アガベの呼吸を促すためにも、適度な「風通し」は必要です。
サーキュレーターの使用も、風通しを改善するための対策
室内で発根管理をする場合、サーキュレーターを使用することも、風通しを改善するための対策です。
サーキュレーターを使用する場合は、アガベに直接強い風を当てるのではなく、室内の空気を循環させることを意識しましょう!
園芸用品に依存しすぎない
園芸用品の中には、植物の発根を促すグッズも市販されています。
アガベの発根管理によく使用されるグッズは、以下の園芸用品があります。
- ルートン
- メネデール
- オキシベロン など
どの園芸用品も、環境を整えた上でプラスαの要素として使用するのであれば、発根管理の味方になってくれるでしょう。
自宅では発根管理開始から1~2か月、根が生える兆しが見られないときに、はじめて発根を促す園芸用品を使用しています。
アガベの発根管理は「オキシベロン」を使用するひとが多いですが、自宅では「メネデール」を使用することが多いです。
以前は「オキシベロン」を使用していましたが、内容量が500mlと多い割に、使用期限があまり長くないので、余らせてしまっていました…。
「メネデール」は活力剤としても使用できる分、使用頻度が高く余らせる心配をせず、使用しやすい園芸用品として愛用しています
園芸用品の用法&容量を守る
アガベは強い刺激を与えれば、発根するわけではありません。
園芸用品を使用する場合は、メーカーが定める用法&容量を守り、必要以上に使用しないことが重要です。
使用方法には『この植物には、☆☆率に薄めて使用すること』と記載がありますが、アガベ(リュウゼツラン)は名前が記載されておらず、希釈率が分からないことも…。
その場合は使用方法に記載されている中で、一番薄い希釈率で使用すれば、間違いありません。
株元に付く、ヌルヌルした物質は取り除く
アガベの発根管理を数週間行っていると、株元にヌメりけが発生する場合があります。
このヌルヌルした物質は、そのまま付けておいても、アガベの発根によい影響を与えません。
「水耕」や「水苔」の場合に発生しやすいですが、「土耕」でも腰水で管理する場合は、ヌメりけが発生することもあります。
このヌメりけは、目で見ても分かりづらいので、手で触って確認する必要があります。
また、必要以上にゴシゴシと洗う必要はなく、軽く手で水洗いすることで取り除けるので、力はいりません。
直射日光に当てない
未発根株は、成長にあたり必要とする水分が、吸水できていません。
株の調子がよいときは直射日光に当てた方がよいですが、未発根の状態で強い光に当てると、高確率で調子を崩します。
- 葉焼けを起こす
- 株が急激に萎れる
株を健康的に育てるためにも、強い光は避けるべきです。
それでは、どれくらいの光量が望ましいのでしょうか?
- 屋外の場合
- 日陰~半日陰
- 室内の場合
- レースのカーテン越しの光
肥料は与えない
アガベの発根管理に、肥料は必要ありません。
変化を付けて、刺激を与える
前述のように、アガベの発根管理には、複数の方法があります。
以前「水耕」で発根管理し、短期間でうまくいったので自宅では「水耕」で発根管理をしています。
と、言う方もいるでしょう。
ただし、過去に成功体験があったからと言って、その方法だけに固執することはオススメできません。
また、発根管理の方法を変えるだけではなく、一時的に温度や光量に変化に付けることでも、アガベにあたらしい刺激を与えられます。
- 温度を変える
- 30℃程度→20℃程度
- 光量を調整する
- 少しだけ光量を強くする など
定期的にリセットする
このときに、消毒液や発根を促す園芸用品があれば、あらためて塗布した方がよいです。
その後、1~2週間ほど乾燥させてからあらためて発根管理を行うと、株が腐るリスクを軽減させられます!
自宅でリセットする周期は、1か月に1回程度を目安にしています。
発根しなくても焦らない
しつこいようですが、アガベは根がない期間が数か月つづいたところで、カンタンに枯れる植物ではありません。
株を腐らせなければ、長期的に発根管理に取り組めます!
たとえ2~3か月発根しなくても、その後の長い付き合いを考えれば、気にすることではありません。
発根後の管理方法
発根したあとの、具体的な管理方法についてご紹介します
水やりは多めに与える
アガベが発根し、まだ十分な根が生え揃っていない場合は、多めに水やりをすることが望まれます。
腰水で管理するか、または土が乾燥する前に水やりをすることで、根の量を増やせます
ただし、いつまでも水やりを多めにしていると、徒長するリスクを高めることに…。
すぐに肥料を与えない
発根後すぐに肥料を与えると、アガベに、
すでに肥料分を吸い上げられているから、根をそこまで成長させる必要がないかもしれない…!
と、思わせてしまい、結果的に、アガベの根が旺盛に成長しない原因になります。
固形肥料を土に入れておく場合は、根がすぐに届かない深い位置に使用することで、根の成長に支障をきたすことを防げるでしょう!
徐々に光量を増やす
真夏の直射日光には注意が必要なものの、それ以外の季節はなるべく長時間、直射日光に当てて育てるのがアガベの基本的な育成方法です
いきなり直射日光に当てるのではなく、徐々に強い光に慣らしていくことで、葉焼け防止につながります
「水耕」や「水苔」で発根させた場合、すぐに「土耕」に切り替える
「水耕」で発根した根は、水の中で成長できるように発達し、「水苔」で出た根は、水苔の中で力を発揮します。
「水耕」や「水苔」から「土耕」に切り替えると、水や水苔の中で機能していた根は枯れ、土の中で機能する根をあたらしく出します。
発根後も「水耕」や「水苔」での育成をつづけると、株が水分を吸い上げすぎて、徒長するリスクが高まります。
まとめ
発根管理は、アガベに育成に欠かせない園芸手法です!
特に胴切り後の「天」は発根に時間がかかり、望ましい対応と、根気強さが求められます。
発根管理の方法には「土耕」、「水耕」、「水苔」があり、それぞれ特徴がありますが、初心者には、リスクが低い土耕がオススメです。
根がない植物をお迎えすることは、ハードルが高いと感じますが、いちど発根管理に成功すると、2回目以降からお迎えしやすくなります
自宅で育成しているアガベの成長記録は、以下の記事でまとめているので、よろしければチェックしてみてください

コメント