観葉植物『アガベ』はテキーラの母?メキシコの歴史と文化に触れる

百年に一度咲く花

かつてはあまり人気がなかった「アガベ」ですが、今や観葉植物として高い人気を誇っています


一般家庭はもちろん、テーマパークや商業施設など、さまざまな場所でそのすがたを見かけるようになりました。
「アガベ」は、メキシコを中心にアメリカ南西部や中南米の砂漠地帯に自生する多肉植物で、その種類は300種以上にも及びます。
自生地では「100年に一度しか咲かない」と言われ、‟センチュリープラント”という別名をもっています。

筆者

開花すると命が尽きる、はかない一生も魅力のひとつです。

観賞用として親しまれている一方で、メキシコでは食用や繊維、お酒の材料として古くから人びとの暮らしに深く関わってきました。

本記事では、「アガベ」の奥深い魅力についてご紹介します

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目次

メキシコ料理に欠かせない、「アガベ」の食文化

食用としての「アガベ」

メキシコ料理と聞いて、「サボテン」を思い浮かべる方は多いでしょう。
意外と「サボテン」は味にクセがなく、日本でも、サボテン料理を提供するお店は増えています。

筆者

サボテンは栄養価が高く、スーパーフードとしても知られています。

そんな、サボテンと並んでメキシコの食卓を彩るのが「アガベ」です

メキシコの先住民は、アガベは葉や茎、花、そして花茎(かけい)まで、ほぼすべての部分を食用にしていました。
「アガベ」を使った料理のレパートリーは、以下のように多岐にわたります。

アガベを使った料理
  • サラダ
  • 煮込み料理
  • スープ など

開花期には、体内に蓄える糖分が増えるため、「アガベシロップ」や「マゲイシロップ」と呼ばれる甘味料としても使われています。

「アガベ」はサボテンと同じく、メキシコの人びとの食生活に欠かせない、万能な植物なのです

1,000年の歴史をもつ伝統酒「プルケ(Pulque)」

「アガベ」はお酒の原料としても、メキシコの食文化に深く根付いています。

その代表格が、「アガベ」の樹液を発酵させて作る伝統的なお酒「プルケ(Pulque)」です。

「プルケ」は、メキシコ高原では「白い酒」を意味する「イスタク・オクトリ」とも呼ばれるお酒で、1,000年以上も前から人びとに親しまれてきました。
アルコール度数は3~5度と低めで、ビタミンやミネラル、アミノ酸などが豊富に含まれているため、健康的なお酒としても知られています。
メキシコでは「プルケ」専門店があるほど人気ですが、長期保存がむずかしく、賞味期限は5日程度です。

筆者

本場の味を存分に楽しむには、メキシコを訪れる必要があるでしょう。

ブルー・アガベが原料の「テキーラ(Tequila)」

「アガベ」は、発酵酒だけでなく、蒸留酒の原料にも用いられています。

発酵酒と蒸留酒
  • 発酵酒
    • 原料をアルコール発酵させてつくるお酒
  • 蒸留酒
    • 発酵酒を加熱し、いちど蒸気にしたものを冷却し、液体に戻したお酒

中でも、日本でも知名度の高い「テキーラ(Tequila)」は、アガベから作られる蒸留酒の代表です。

筆者

テキーラのアルコール度数は、35~55度と高めです。

ちなみに、“ブルー・アガベ”と呼ばれる「アガベ・アスール・テキラーナ」のみが、「テキーラ」の原料として認められています。

ブルー・アガベの特徴
  • 青みがかったシャープな葉を展開する
  • 10年程度かけて、直径70~80cmまで成長する

メキシコ国内でも、特定の5つの州で特定の製法でつくられたものだけが「テキーラ」と名乗ることが許されています。

テキーラの飲み方

「テキーラ」の飲み方としては、塩とライムを添えて一気に飲む「ショット」が有名です

他にも、ジュースなどで割ってカクテルにするなど、さまざまな楽しみ方があります。

筆者

強いお酒なので、飲む際は自分のペースで楽しむことが大切です。

‟テキーラの母”と称される「メスカル(Mezcal)」

「テキーラ」以外にも、「アガベ」からつくられる蒸留酒に「メスカル(Mezcal)」があります。
アルコール度数は35~55度とテキーラと変わりませんが、その歴史は500年以上とテキーラより古く、‟テキーラの母”とも称されています。

「テキーラ」が特定の品種(ブルー・アガベ)からしかつくれないのに対し、「メスカル」は特定の品種に限定されていません。
さまざまな「アガベ」を使ってつくることができるため、異なる品種をブレンドした「ブレンド・アガベ」も楽しめます。

「アガベ」本来の風味を幅広く味わえるのが、「メスカル」の大きな魅力です

「アガベ」の伝統的な工芸品&世界遺産

「アガベ」は、メキシコの人びとの食卓を豊かにするだけでなく、文化的な側面でも重要な役割を担っています。

メキシコの生活を彩る「アガベ」の工芸品

「アガベ」の葉からは、軽くて丈夫な繊維が採取できます。

この繊維は古くから縄、布、紙などに加工され、メキシコの人びとの生活を支えてきました。

中でも「マゲイバッグ(Maguey bag)」は、アガベ繊維でつくられる代表的な工芸品です。
「マゲイバッグ」は、トートバッグやショルダーバッグとして、日常的に使われています。

筆者

マゲイバッグには、伝統的な模様が装飾されているため、日常を彩るおしゃれなアイテムとしても人気です。

メキシコの人びとの暮らしに欠かせない日用品や工芸品には、常に「アガベ」が存在しているのです。

世界遺産にもなった「アガベ」の景観

メキシコには、「アガベ」(日本ではリュウゼツランとも呼ばれます)がつくり出す景色が、世界遺産に登録されています。

「テキーラの古い産業施設群とリュウゼツランの景観」は、メキシコにとって「アガベ」がいかに重要な存在であるかを物語っています。

伝統的な風習にも欠かせない「アガベ」

「アガベ」はメキシコの伝統的な風習にも欠かせません。
死者を懐かしい気持ちで思い出し、感謝する「死者の日」をはじめ、伝統的な行事では「アガベ」を原料とした料理やお酒が振る舞われるのが一般的です。

「アガベ」は、メキシコの人びとの食卓や日々の暮らしだけでなく、文化や伝統に深く根ざした、大切な植物なのです

観葉植物としての魅力的な「アガベ」

メキシコの文化に深く関わる「アガベ」は、観葉植物としても高い人気を誇っています

乾燥に強く、寒暖差に強いため、初心者でも育てやすい

「アガベ」は乾燥に強く、水やりの手間が少ないため、はじめて植物を育てる方にとっても育てやすいです。
日本の暑さや寒さにも比較的強いため、品種を選べば、一年中屋外で育てることもできます。

個性豊かなすがたを楽しめる

「アガベ」の多様な品種も大きな魅力です。
葉の形状や色合い、斑の入り方など、種類によって個性が豊かです。

コンパクトな品種は小さな鉢でも楽しめ、大型品種は圧倒的な存在感を演出してくれます

日本で人気を集めている品種
  • チタノタ(titanota)
  • 笹の雪(victoriae reginae)
  • パリー(parryi)
筆者

基本的にどの品種もゆっくりと成長し、魅力的な葉をロゼット状に展開します

十分な日当たり&控えめな水やりで、良型に育てられる

「アガベ」は育てる環境によって、すがたが大きく変わるのも特徴です。
日照不足や水の与えすぎで葉が間延びしてしまうこともありますが、適切な環境で育てれば、ずっしりとした力強いすがたに育ちます。

筆者

あたらしい葉が次々と生え、子株も出やすいため、形が崩れても仕立て直しがしやすいのも魅力です

育成面(培養土&肥料)については、以下の記事で詳しく解説しています
ご興味があればお読みください

まとめ

本記事では、メキシコの豊かな文化を象徴する植物「アガベ」の、多岐にわたる魅力をご紹介しました

メキシコの人びとにとって、「アガベ」は単なる植物ではありません。
食用として、また伝統的なお酒「プルケ」や世界的に愛される「テキーラ」の原料として、食文化に深く根ざしています。
さらに、その繊維は工芸品となり、その景観は世界遺産に登録されるなど、メキシコの歴史と文化を語る上で欠かせない存在です。

観葉植物としての「アガベ」は、品種ごとの多彩なすがたで、楽しませてくれます

メキシコ文化の奥深さを知ることで、「アガベ」を眺める視点もまた、変わるのではないでしょうか。

以上です!
以下の記事では、自宅で育てているアガベの成長記録や育成環境などをご紹介しています

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