冬型コーデックス(オトンナ)の発根管理~ベアルート株の選び方や具体的な手順~

塊根植物の発根管理

根や茎を肥大させる「コーデックス(塊根植物)」に魅了されると、ひと株ごとの個性や、成長過程に愛着が湧いてきます

中でも“未発根株”を入手し、自らの手で発根管理を行うのは、他では感じられない楽しみがあります

本記事では、冬型「コーデックス」である「オトンナ・ヘレー」と「オトンナ・カカリオイデス」の未発根株を実際に購入し、発根させるまでの過程をご紹介します
これから発根管理に挑戦したい方や、未発根株を選ぶ際のポイントを知りたい方にとって、少しでも参考になれば幸いです。

目次

「オトンナ」の基本データ

原産地:南アフリカ、ナミビア
科・属:キク科 オトンナ属
学 名:Othonna herrei(オトンナ・ヘレー)
    Othonna cacalioides(オトンナ・カカリオイデス)
別 名:蛮鬼塔(ばんきとう)※ヘレー

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発根管理が必要になる理由

植物を輸出入する場合は、あらかじめ根を切り落とす必要がある

植物を輸入する場合は、害虫などを持ち込まないように、植物の根をあらかじめ切り落とす必要があります。

それは、国際的な取り決めのため、日本から海外に植物を輸出する場合にも適用されるルールです。
※害虫がひとに危害を加えたり、生態系を崩さないようにするための対策です。

植物は根がない状態では、いずれ枯れてしまう

植物が水分を体内に取り入れるときは、根からだけではなく、葉からも吸水しています。
ただし、葉から取り込んでいる水分量は微々たるもので、多くの水分は根から吸い上げています。

大部分の植物は、根が存在しない状態ではすぐに水分不足に陥り、長いあいだ生きていくことはできません。

しかし「コーデックス」をはじめとした多肉植物は、数か月以上も、根がない状態(=未発根株)で生きられます。

根がなくても、しばらく生きられる多肉植物は、未発根の状態のまま販売される

「多肉植物」は乾燥が進む環境で暮らしていくために、他の植物よりも、多くの水分を体内に蓄えられるように進化した植物です。
他の植物とは異なり、根から水分を吸い上げられなくても、体内に蓄えている水分を少しずつ消耗しながら、しばらくは生きられます。

乾燥に強い多肉植物の性質を利用し、海外から輸入された多肉植物が、未発根の状態のまま販売されていることがあります。

そのような未発根株を購入した場合に、多肉植物(コーデックス)を発根管理する必要が出てくるのです

コーデックス(塊根植物)の発根管理について

100%発根させられる方法はない

植物が生き物である以上、未発根の「コーデックス」を、100%発根させられる方法はありません。

一般的に未発根株よりも、発根済みの株の方が、販売価格は高くなります。
未発根株をすぐに発根できる方法が確立されていれば、発根させた上で販売されるケースが、今以上に増えるでしょう。
それでも、未発根株が販売されているということは『この方法で管理すれば、短期間で必ず発根する』という方法が、存在しないことの裏付けでもあります。

「山採り株」と「現地発根株」の存在

海外の自然の中で育っていた植物を、日本に輸入した株は「現地球」や「現地株」と呼ばれることがあります。
さらに「現地球」の中でも、「山採り株」と「現地発根株」が存在します。

山採り株と現地発根株
  • 山採り株
    • 自生地で採取した植物を、そのまま日本に輸出した株
  • 現地発根株
    • 自生地で採取したあとに、現地の畑でいちど発根させた上で、日本に輸出した株
      • 山採り株と比べると、発根する確率が高い傾向にある

現地発根株は発根させる手間がある分、山採り株と比べると販売価格は高い傾向にありますが、発根確率の面から最近注目されています

発根管理株について

2023年11月19日(November 19, 2023)

今回、発根管理を行う株

発根管理を行うのは、冬型の「オトンナ」です。

発根管理を行う2株
  • オトンナ・ヘレー(Othonna herre)
  • オトンナ・カカリオイデス(Othonna cacalioides)

五反田のTOCビルで開催された多肉植物専門のイベント、「サボテン・多肉植物ビッグバザール」に参加したときに入手した株です。
イベントの様子は、以下の記事でご紹介しています

  • オトンナ・ヘレー
    • 写真の左側に映る、大きくてゴツゴツしたボディを持つ植物
  • オトンナ・カカリオイデス
    • 右側に映る、小さくてまん丸なボディの上側に、髪の毛のように葉を乗せている植物

未発根株の選び方

一般的に「未発根株」は発根済みの株よりも、調子の良し悪しに、ハッキリとした違いがあらわれています。
特に、体内に蓄えている水分量は、それぞれの株によって異なります。

発根確率を上げるためには、株の柔らかさや重さ、シワの有無に注目し、水分を蓄えられた株を見分けることが重要です

発根確率が高い株と低い株
  • 発根する確率が高い株(水分量が多い株)
    • 硬い
    • 重みがある
    • 目立つシワが入っていない
  • 発根する確率が低い株(水分量が少ない株)
    • 柔らかい
    • 軽い
    • 過度なシワが入っている

写真や動画だけでは判断できない内容が多いため、できれば自分の手で実際にもってみて、株の状態を直接確認するのをオススメします。
未発根株を購入する際は、塊根植物に実際に触れる多肉植物の専門店や、植物関連のイベントなどが望ましいです。

発根管理の成功率は、『株の鮮度が命』と言っても過言ではありません。
気に入った見た目の「コーデックス」がいても、その株の状態が悪いのであれば、購入を見送った方がよい場合もあります。

「オトンナ・ヘレー」&「オトンナ・カカリオイデス」の状態

自宅に持ち帰ったときの「ヘレー」と「カカリオイデス」の根元は、下の写真のような状態でした。

発根管理前の根元の状態
  • オトンナ・ヘレー
    • 根が生えている様子は確認できない
  • オトンナ・カカリオイデス
    • 根が生えているものの、黒くてカサカサな状態で、すでに機能していない

「カカリオイデス」の根は、そのまま付けたままにしておいても、株の成長面でプラスには働かないため、切り落としました。

いずれの株も、もったときにズッシリとした重みがあり、変な柔らかさも感じられません。

「ヘレー」は、シワの有無が分かりにくい見た目をしており、「カカリオイデス」には、少しだけシワが入っています。
シワと言っても、現状であれば目立ったものではないため、許容範囲と言えるでしょう。

「オトンナ・ヘレー」&「オトンナ・カカリオイデス」の発根管理の記録

用意するガーデニング用品

用意する(あれば望ましい)ガーデニング用品は、以下のとおりです。

  • 発根促進剤
    • オキシベロン液剤(ルートンやメネデール水溶液などでも可)
  • スポイト
  • 水を溜められる容器
  • 殺菌剤
    • ベンレート水和剤、STダコニール1000  など

冬型「コーデックス」は夏型「コーデックス」よりも、発根する確率は高いです。
発根剤や殺菌剤をわざわざ準備せず、もしも自宅にあれば使用するくらいでも、よいかもしれません。

オキシベロン液剤(発根促進剤)に浸ける

夏型「コーデックス」の発根管理を行う場合は、根の先端をカッターなどで切り落とし、植物の新鮮な断面を出すのが一般的です。

ただし新鮮な断面を出す作業は、冬型の「コーデックス」には必要ありません。

今回も根の先端は切り落とさず、発根促進剤「オキシベロン液剤」を薄めた水に、株の根元を浸けました。
「オキシベロン液剤」は50倍に薄め、5時間ほど浸けています。

オキシベロンを薄めた“水風呂”に入っている様子

「オキシベロン液剤」は、発根管理以外に使用しづらい点がデメリットですが、「ここぞ!」というときに力を発揮するグッズです。
アガベなどの発根管理でも、定番のアイテムです。

この水に薄める作業が意外と手間ですが、液剤の容量を量るときは、「オキシベロン液剤」のキャップも使用できます。
キャップ1杯あたりの内容量は、10mlです。

ただし10mlは意外と量があり、微調整がしづらいため、もっと少ない分量を量りたいときは、スポイトを使用するとよいでしょう。
スポイトは「オキシベロン液剤」以外の用途でも、液体肥料や活力剤などを薄めるときにも使用できるため、便利なグッズです。
スポイトは100円ショップでも入手可能ですが、メモリが付いていないタイプも市販されているため、購入時にはチェックしておきたいポイントです。

乾燥させる

「オキシベロン液剤」に浸けたあとは、風通しのよい場所に置き、2~3日ほど株を乾かします。

水耕で発根を促す

おもに「コーデックス」の発根管理に用いられるのは、以下の3つの方法があります。

  • 土耕(どこう):無菌の土に植え込む
  • 水耕(すいこう):水に漬け込む
  • 水苔(みずごけ):水で戻した水苔に漬け込む

今回は、「水耕」で発根管理をすることにしました

ちなみに「土耕」で管理する場合は、排水性&通気性に優れた土を使用し、表土が乾いたタイミングで水やりをします。

水道水を使用する

使用する水は、水道水です。
ミネラルウォーターには栄養が豊富に含まれているため、水やりを含め、植物を育成するために適した水とは言えません。

水は2~3日ごとに交換する

水道水を常温で保存すると、3日間もちます。

2~3日ごとに水を取り換え、株が腐るリスクを下げることが重要です。

真冬の場合は、水温にも注意する

真冬に発根管理を行う場合、水道水が10℃以下になっていることがあります。
水が冷たすぎても発根を促せないため、水温が低すぎる場合は室内に半日以上置き、あらかじめ温めておきます。

適温(15~25℃)を保つ

冬型「コーデックス」にとって、過ごしやすい温度は15~25℃です。

なるべく、その温度が保てるようにします。
ただし、ある程度の寒暖差には当てた方がよいため、一日のあいだでも温度差がつけた方が望ましいです。

明るい環境を保つ

未発根株はまだ本調子ではないため、一日を通して直射日光が当たるくらいの、強い光を当てる必要はありません。
ただし完全な日陰でも発根を促せないため、屋外の日陰など、一定の光量が確保できる場所に置きます。
真冬は空から降りそそぐ光が弱いため、午前中に1~2時間ほど直射日光に当てるくらいでも、調度よいでしょう。

風通しを確保する

冬型「コーデックス」に二酸化炭素を供給するために、風通しのよい場所に置きます。

風通しがよくない室内などで管理する場合は、サーキュレーターを使用し、空気の流れをつくることで、発根を促せます。

株の鮮度も重要ですが、

冬型コーデックス

この環境であれば、暮らしていけそうだから、根を生やそう!

と、冬型「コーデックス」に思わせることで、発根管理の成功確率を高められます

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2023年12月1日(December 1, 2023)

前回の記録から約2週間が経過しました。

発根するまでには、少し時間がかかるかもしれないな。

と思っていましたが、「ヘレー」も「カカリオイデス」も根を生やしはじめました

赤い矢印の先に、白い根が確認できます。
カカリオイデスも無事に発根したようです。

「ヘレー」の方が先に発根し、1cmほど根を伸ばしています。
「カカリオイデス」は、まだ根を生やしたばかりで、根の長さは1mmに満たない程度です。

水耕の場合、浸ける深さが重要

「水耕」で発根管理を行う場合、どのくらいの水位まで、株を浸けるかが重要です。

  • 株を浸ける位置が深すぎる
    • 株が腐るリスクを高めてしまう
  • 株を浸ける位置が浅すぎる
    • 根元まで浸けないと、発根を促せない

根が生えてくる場所が、水にぎりぎり浸かっている状態が望まれます。
株の大きさや樹形によっても、位置は異なりますが、今回は1~2cmほど水を溜めれば十分でした。

根元が水に浸かっていれば、十分です。

水耕で発根した場合、すぐに土耕に切り替える

「水耕」で発根した根は、土の中ではうまく機能せず、水中でこそ力を発揮する根です。

「水耕」から「土耕」に切り替えた場合、植物は「水耕」で生やした根を成長させず、「土耕」用のあたらしい根を出すと言われています。
「水耕」で発根管理をする場合、発根が確認できたら、すぐに「土耕」に切り替えることが望まれます。

園芸店を訪れると、水耕栽培のサボテンが売り場に並んでいる光景を見かけるため、乾燥した環境を好む「コーデックス」も水耕で育てられるのかもしれません。

ただし水耕栽培では水分過多になりやすく、育成環境のバランスが崩れ、徒長する原因にもなるでしょう。
長いあいだ水耕栽培の環境で育てていくのは、オススメできません

実際に土耕に切り替えたときの様子

さいごに、自宅で使用している多肉植物用の培養土に植え付け、水やりをして発根管理は終了です!

植物を土に植え付けてから、最初に水やりをするときは、鉢底から流れてくる水の色が透明になるまで、たっぷりと水やりをします。
微塵(みじん:細かく砕けてドロ状になっている土)が鉢内に残っていると、通気性などが悪くなる原因にも…。

株の成長に勢いが出てくるまでは、水を多めに与えることで「コーデックス」の根の成長を促し、徐々に水やりの頻度を減らしていきます。

まとめ

さいごに、発根管理の手順をあらためて記しておきます。

  • 未発根株を選び方は、水分がしっかりと蓄えられている株を選ぶ
  • 「水耕」や「土耕」で管理する前に、発根促進剤に浸ける
  • 15~25℃の温度を保つ
    • 寒暖差があると望ましい
  • 水道水を使用し、2~3日おきに交換する
    • 冷たすぎる水温にも注意する
  • 屋外の日陰程度の日が当たる環境で、風通しを確保する

今回は短期間で発根したものの、発根管理は長期間にわたることもあります。
ただし長く取り組んだ分だけ、発根に成功したときの達成感は、大きな喜びとなるでしょう

本記事では、「オトンナ・ヘレー」と「オトンナ・カカリオイデス」の発根の記録を通して、必要な道具や環境づくりのポイントをご紹介しました。

「ヘレー」や「カカリオイデス」の、その後の成長記録&育成環境については、以下の記事でまとめています
よろしければ、あわせてお読みください

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