園芸用土は再利用できる
鉢植えの植物は、成長とともに根詰まりを起こしたり、土の栄養分が失われたりするため、数年ごとの植え替えが欠かせません。
自然界では、枯れ葉や枝が虫や微生物によって分解され、あたらしい土に再生するサイクルが常に働いています。
しかし限られた鉢の中では、自然の恵みが少なく、いちど劣化した土はなかなか元に戻りません。
再生できないなら、使い終わった土は廃棄するしかないのでは…。
そう思っていませんか?
実は、少し手を加えるだけで、劣化した園芸用土を良質な培養土に生まれ変わらせることができます。
本記事では、新品の園芸用土とリサイクルした用土、それぞれの特徴を比較し、劣化した園芸用土をリサイクルする方法を詳しくご紹介します
園芸用土のリサイクルは、使用済みの土をふたたび使うこと
使用済みの園芸用土に、そのまま別の植物を植え付けると、植物が調子を崩してしまうリスクがあります。
園芸用土の「リサイクル」とは、使用済みの園芸用土を適切に処理し、ふたたび使うことです。
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本記事で紹介する方法で適切な処理ができれば、リサイクルした土でも植物を元気に育てられるため、積極的にリサイクルしてみてください!
園芸用土をリサイクルするメリット&デメリット
園芸用土をリサイクルするメリット
園芸用土をリサイクルすると、どのようなメリットがあるのでしょうか!?
ここでは、新品の園芸用土と比較したときのメリットをご紹介します


リーズナブルに園芸を楽しめる
再生材は、新品の園芸用土よりコスパがよい
使用済みの園芸用土に腐葉土や赤玉土、固形肥料などを配合することも、園芸用土をリサイクルするひとつの方法です。
ただし、土を再生させることに特化した「再生材(リサイクル材)」を使用した方が、スムーズに機能を回復させられます。
- 栄養分(肥料分)の補給
- 団粒構造の再構築
- 有用な微生物の活性化
- pH(酸度)の調整 など
土を処分する費用が抑えられる
一部の地域を除き、多くの自治体では使用済みの園芸用土を、ごみとして回収していません。
いらなくなった園芸用土は、お庭にまいたり、園芸店やホームセンターで回収してもらったりする必要があります。
土をまけるスペースや、自宅の近くに回収してもらえるショップがなければ、不用品回収業者に有償で回収してもらうことにも…。
環境負荷の軽減
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近所の園芸店で、いつも購入していた園芸用土が長期間にわたり欠品中で、土は有限の資源ということを痛感しました…。
園芸用土の使用量が抑えられるということは、それに付随する、以下のエネルギーも削減できます。
- 園芸用土を「採掘」するためのエネルギー
- 園芸用土を「加工」するためのエネルギー
- 園芸用土を「輸送」するためのエネルギー など
園芸用土をリサイクルするデメリット
時間と手間がかかる
園芸用土をリサイクルするためには、不要物や微塵を除去したり、用土を殺菌したりするなど、いくつかの工程が必要です。(具体的な方法は後述します。)
そのまま使用できる新品の園芸用土と異なり、ある程度の時間と手間がかかるのは、用土をリサイクルするデメリットです。
作業するスペースが必要
園芸用土のリサイクルには、土を広げて乾燥させたり、殺菌したりするスペースが必要です。
おもにベランダなどで植物を育てている場合など、限られたスペースで園芸を行う場合は、この点がネックになることがあります。
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多くの植物を育てている場合も、スペース問題が深刻な傾向があります。
使用済みの園芸用土のリスク&注意点
使用済みの園芸用土は、植物が元気に育つための土としては不十分なことがあり、そのまま次の植物に使うのはおすすめできません。


病害虫の発生リスク
病原菌が残っているリスク
植物は生きものなので、調子を崩したり、枯れたりすることがあります。
以前植わっていた植物が、病気に感染していた場合、園芸用土に病原菌が残っていることがあります。
病原菌が残っている状態で植物を植えると、植物が根から病原菌を吸い上げ、調子を崩してしまう原因にも…。
周囲で育てている植物が元気なのに、特定の植物だけが枯れてしまった場合は、病気に感染していた可能性があります。
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植物が枯れた原因が分からない場合、その用土はリサイクルせず、廃棄した方が無難です。
害虫が残っているリスク
園芸用土の中に害虫の卵や、幼虫などが潜んでいる場合があります。
害虫の卵などが残っていると、あたらしい植物を植えた際に繁殖し、植物の根を食べられてしまうなどの被害が出ることも少なくありません。
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新品の用土でも、害虫の卵などが入っていることはありますが、使用済みの土よりリスクは低いです。
肥料が不足している
園芸用土をリサイクルする場合、以前植わっていた植物が、土の中の栄養分(肥料分)を使い果たしていることがあります。
肥料を補充せずに園芸用土をリサイクルすると、植物に必要な栄養が不足し、健康的な生育につながりません。
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一般的に新品の用土(培養土)には、植物が必要な肥料が入っています。
連作障害のリスク
適切な処理をしないまま園芸用土をリサイクルすると、以下の理由で連作障害のリスクを高めます。
- 病原菌の蓄積
- 植物に寄生する病原菌が、土壌に蓄積することがある
- 栄養分(肥料分)の偏り
- 品種ごとに吸収しやすい栄養分(肥料分)はさまざま。特定の品種の植物をつづけて植えると、土壌の栄養分に偏りが出やすい
- 有害物質の蓄積
- 植物が根から分泌する「アレロパシー物質」という化学物質が、土壌に蓄積することがある
ゴミや不要物が残っている
使用済みの園芸用土には、古い植物の根や枯れ葉などが残っていることがあります。
鉢の中は虫や微生物の数が少なく、根や葉が分解されにくい
葉が腐敗した「腐葉土」が土壌改良剤として用いられるように、根や葉は虫や微生物によって分解され、植物が育つための土づくりに役立ちます。
ただしそれは自然界の話で、鉢の中は虫や微生物の数が少なく、短期間で根や葉が分解される環境ではありません。
また限られた鉢内のスペースを圧迫する点からも、枯れた根や葉は不要な存在です。
雑草などのタネは、特に厄介な存在
特に厄介なのは、周囲で育つ植物のタネが、使用済みの園芸用土に紛れていた場合です。
他の植物が鉢の中で発芽すると、土の中のスペースが少なくなるだけでなく、園芸用土の肥料分を使い切ってしまうリスクもあります。
団粒構造が崩れ、微塵が発生する
団粒構造は通気性や排水性に影響する
園芸用土には‟よい土”、‟よくない土”と呼ばれる土があります。
- ‟よい土”と呼ばれる園芸用土
- 用土の粒が崩れておらず、団粒(だんりゅう)構造と呼ばれる小さな集合体を維持している
- ‟よくない土”と呼ばれる園芸用土
- 用土の粒が崩れてしまい、団粒構造が維持できていない
使用済みの園芸用土は、団粒構造が崩れていることが多く、植物が元気に育ちにくいです。
微塵は通気性や排水性を低下させる
用土の粒が崩れると、通気性や排水性を低下させる「微塵」(みじん)と呼ばれる存在になります。
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微塵は1mm以下の細かい粒子で、泥のような用土です。
園芸用土は、水やりや雨などで徐々に崩れていくため、使用済みの園芸用土は微塵が多い傾向があります。
新品の用土と使用済みの用土の比較表
新品の用土と使用済みの用土(園芸用土をリサイクルすること)を比べると、以下の表のようになります。
新品の用土 | 使用済みの園芸用土 (園芸用土をリサイクルする) | |
---|---|---|
費用 | 高い | リーズナブル |
環境への負荷 | 大きい | 小さい |
時間・手間・スペース | 少なくて済む | 余計にかかる |
病害虫リスク | 低い | 高い |
肥料 | 元肥が入っていることが多い | 追肥が必要 |
連作障害のリスク | 低い | 高い |
ゴミ&不要物 | 少ない | ふるいで取り除く必要がある |
微塵 | 少ない | ふるいで取り除く必要がある |
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新品と中古品を比べているので当たり前ですが、新品の用土の方が、メリットが多いという結果になりました。
特に病害虫と連作障害は、植物が枯れるリスクが高まるため、リサイクルするときには改善したいポイントです。


使用済みの園芸用土をリサイクルする方法
使用済みの園芸用土は、どのような方法で、機能を回復させればよいのでしょうか!?
ここでは、園芸用土をリサイクルするための具体的な方法をご紹介します
用意するもの
園芸用土のリサイクルには、以下のものを用意します。
- 園芸用のシート
- 園芸用土を乾かすために使用
- 園芸用のふるい
- 不要物や微塵を取り除くために使用
- 黒いビニール袋
- 園芸用土を殺菌・殺虫するために使用
- 園芸用土の再生材(緩効性肥料など)
- 古くなった園芸用土の機能を回復させるために使用
- 園芸用の手袋
- 作業をスムーズに進めやすくなる
少量の用土であれば、園芸用のシートではなく、ビニールや新聞紙でも代替可能です。
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これからご紹介する手順を踏まえ、必要に応じて、使用するものを準備してください。
園芸用土をリサイクルする方法
使用済みの園芸用土が濡れている場合は、園芸用のシートの上に土を広げ、しっかりと乾かします。
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乾いているか分かりにくい場合は、土に直接触れて、確認するのがおすすめです。
屋外で乾かす場合は、風が当たらないスペースで行うか、強い風が吹かないタイミングで実施しましょう。
園芸用のシートは用土のリサイクル以外に、植え替えなどでも活躍するガーデニング用品です。
Amazonなどでも購入できるため、植物をいくつも育てる場合は、準備しておくと便利です。
つづいて園芸用のふるいを使用し、用土に残っている不要な根やごみ、細かい粉(微塵)などを取り除きます。
園芸用ふるいは、粗目・中目・細目の3種類の網がセットになっており、目の大きさによって取り除けるものが異なります。
- 粗目(目が粗いタイプ)
- まずは目が粗いタイプで、根や石などの大きな不要物を取り除く
- 中目(目が中くらいのタイプ)
- つづいて、小さなごみや細かい根を取り除く
- 細目(目が細いタイプ)
- さいごに微塵を取り除き、排水性や通気性を向上させる
細目の園芸用のふるいの上に残った園芸用土が、リサイクルできるものです。
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上記のように、3つの網を使用するのが基本です。
ただし、粗目と細目を使用すれば多くの不要物を取り除けると感じているため、自宅では中目タイプのふるいは使用していません。
園芸用のふるいは、用土をリサイクルするときだけではなく、新品の用土の微塵を取り除きたいときも使用します。
コンパクトな園芸用のふるいが、100円ショップで販売されているため、育てている植物が少ない場合はおすすめです。
Amazonなどでは、錆びづらいステンレス製のふるいも販売されています。
園芸は水を扱う機会が多いため、錆びに強い性質はうれしい特徴です。
つづく作業は、園芸用土の殺菌・殺虫です。
園芸用土は太陽光のエネルギーを使用し、殺菌・殺虫する方法が一般的ですが、他に以下のような方法もあります。
- 沸騰させたお湯をかける
- 木酢液(もくさくせき)で殺菌する
- 木材を炭化する際に発生する煙を冷却し、蒸留して得られる液体
- 電子レンジやオーブンを使用する
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本記事でご紹介するのは、太陽エネルギーを使用する方法です。
園芸用土を、黒いビニール袋に入れ、水をかけて直射日光に当てます。
園芸用土を十分に殺菌・殺虫するためには、60℃以上のお湯に、30分以上浸けることが重要です。
季節や天候、気温にも左右されますが、直射日光に当てる期間は以下を目安にしてください。
- 夏=2~3日
- 春・秋=2~3週間
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温度が上がりにくい冬は、2~3か月ほど土を寒さに当てる方法でも消毒できます。
晴れの日が少ない梅雨どきなどは、熱消毒が進まないため、晴天がつづくタイミングで作業するのがおすすめです。
消毒期間中に何度か、ビニール袋をひっくり返し、土にまんべんなく光が当たるようにします。
土が乾いている場合は、水を足して湿らせてください。
園芸用土の再生材を混ぜて、機能を回復させます。
繰り返しになりますが、再生材の役割は以下のように多岐にわたります。
- 栄養分(肥料分)の補給
- 団粒構造の再構築
- 有用な微生物の活性化
- pH(酸度)の調整 など
再生材を使用せずに用土の品質を向上させるためには、土の状態を見極める必要があり、さまざまな用品を用意することに…。
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ひゅうが土や鹿沼土、赤玉土などの無機質の園芸用土のみの場合は、再生材を使用せず、固形肥料と殺虫剤を混ぜます。
再生材を混ぜた園芸用土にもすぐに植物を植えられますが、1~2週間ほど寝かせることで、さらに用土の品質を高められます。
土を寝かせることで、微生物の動きが活発になり、新品同様にふかふかの品質が戻りやすくなります。
しばらく寝かせるのは、土の状態がよくなり、連作障害の対策にも有効です。
再生材は、花ごころさんから出ている以下の商品をはじめ、各園芸用土メーカーが発売しています。
園芸用土をリサイクルする場合の注意点
同じ科の植物は植えない
異なる科の植物を植えることで、土の中の微生物や栄養分のバランスが崩れにくく、連作障害のリスクを抑えられます。
病害虫の疑いがある土は、リサイクルしない
土に病害虫が残っている疑いが少しでもあるなら、その土は処分してしまった方が安心です。
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病害虫の被害が拡大し、大切な植物を枯らしてしまったら、元も子もありません。
まずは丈夫な植物に使用する
リサイクルした土で育てる植物は、大きく成熟した株や、丈夫な品種がおすすめです。
幼苗やデリケートな植物に使用するのは、他の植物で、問題がないことを確認してからにしましょう。
特にはじめて再生用土を使用する場合は、一気に多くの植物に使用せず、一部の植物で様子を見ながら使用するのをおすすめします。
まとめ
あたらしい土を購入する費用を抑え、土の処分に困ることも少なくなります。
なにより、有限な資源である「土」の消費を抑え、環境にやさしい園芸を楽しめるのは、うれしいポイントです。
少し手間はかかりますが、ぜひ本記事でご紹介した方法で、コスパに優れた園芸に挑戦してみてください!
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