落葉=枯れるではない
植物は葉を展開させることで、太陽から降りそそぐエネルギーを、自らが生きていくエネルギーに変換し、生きています。
根からも水や栄養素を吸い上げていますが、根から吸い上げたエネルギーだけで、生きていくことはできません。
葉から吸収した光合成エネルギーは、植物が生きていくために必須となる、エネルギー源のひとつです。
春には伸ばした枝からを葉を展開させ、展開させた葉を大きく広げ、夏にはさらに旺盛に葉が生い茂り、秋になると葉を紅色に染めはじめ、そして冬になると茶色くなった葉を落とす「落葉樹の葉の成育サイクル」。
実は日本のように、植物がいっせいに紅葉する国はめずらしく、海外から来た方は紅葉におどろくことも多いようです。
一年のうちでも、植物を取りまく環境の変化が少なければ、植物がわざわざ葉を落とす必要はありません。
日本で見られる紅葉は、秋に生じる環境の変化によって、引き起こされるものです。
日本での紅葉は、四季折々変わっていく中で毎年見られる現象のひとつですが、季節のうつり変わりだけではなく条件が重なることによって、植物が葉を落とすことは充分に起こりえます。
本記事では、植物が落葉する主な理由について、ご紹介しています
植物が落葉する理由
1. 季節の変化
落葉する理由のひとつめは、「季節の変化」による影響です。
一般的に「落葉」と聞いてイメージされるのは、この季節の変化によるものになるでしょう。
夏の季節は気温も暖かく日照時間も長いですが、その季節が終わり、気温が低下したり日照時間が短くなったり、さらに雨が降る日が少なくなったりと、植物が生長していくためには条件が悪くなる季節に突入していきます。
涼しくなったり寒くなったりすると、「落葉樹」とよばれる植物は紅葉をはじめ、最終的に葉を落としていきます。
日照時間が短い季節に葉を展開させていても、植物が必要としている光の量を確保できない日が、続いてしまうことになるでしょう。
葉を展開している状態をつづけることは、葉を健康的な状態に維持していくために、植物も少なからずエネルギーをつかいますが、葉から必要なエネルギーを得られないのであれば、葉を展開している意味がなくなってしまいます。
また、氷点下に突入するような低い気温では、葉の中に蓄えている水分が凍結することもあり、葉を展開していることで逆に植物にダメージを与えるリスクを備えています。
そのため、葉を展開していることによる「エネルギー効率」の観点や「自己防衛」の観点から、植物は葉に預けている水分や葉緑体などを幹に回収したうえで、葉を落としていくのです。
一般的に葉が緑色から紅色に変わっていく理由は、葉に預けていた葉緑体などを幹に回収することで、引き起こされる現象とされています。
2. 水が足りない
つづいて、「水分不足」という理由です。
植物が生育していくために必要としている水分量が、充分に体内に蓄えられていない状態が続いた場合にも、落葉する場合があります。
ひとが暑いときに汗をかくように、植物は葉の温度が高温に上がりすぎないように、葉から水分を出しています。
水分不足の状態で、強い光に当たってしまうと体温調整がうまくいかず、葉焼けにつながってしまうこともあるでしょう。
ただし、たとえ強い光に当たらずとも、水分不足の状態がつづけば、自ら葉を黄色く染め、やがて落葉することもあります。
水分が不足しているときは、光合成をしてエネルギーをつくり出すことよりも、葉から水分を出す「蒸散」を防ぐことを優先しようとするため、それ以上水分不足が深刻化しないように、葉を落とすのです。
自分自身が大きく「生長」していくことよりも、いまの自分の「生命」が大事ということです!
植物が落葉しないようにする「水やり」については、下記の記事で書いています。
3. 栄養分が足りない
植物が必要としている栄養分が不足している場合にも、葉が黄色くなり、落葉することがあります。
植物が必要としている成分は17個あるとされています。
このうち、三大栄養素として「窒素(ちっそ)」「リン酸」「カリウム」が知られていますが、このうち「葉肥」といえわているのは、「窒素」です!
この「窒素」が不足すると落葉に直結しますが、「窒素」だけではなくいずれかでも栄養分が不足すると、植物が本来の調子を発揮できずに落葉することもあるでしょう。
特に「カリウム」は、根の健康を促進するための栄養素なので、「カリウム」が不足すると水分が吸い上げられずに落葉につながってしまう可能性があります。
肥料については、下記の記事で詳しくご紹介しています。
4. 病気や虫
植物が病気にかかってしまったり、植物の大敵である害虫からの攻撃を受けたりすると、ダメージを受けた葉を落とすことがあります。
病気が植物全体に広がらないうちに、被害を受けた葉のみを、意図的に落とすことで被害を最小限におさえるのです。
これはひとや動物には到底できない、植物の「再生力」があってこそ成せるワザといえるでしょう。
また、害虫が葉の一部を食べると栄養の循環がうまくいかずに、最終的に落葉することがあります。
栄養の循環がうまくいかなければ、葉を展開させていることによるメリットが小さくなるので、不必要なものは自ら落としてしまうのです。
5. ストレス&不調
「ストレス」やも、落葉する理由になるでしょう。
植物を取りまく環境が唐突に変わった場合や、なんらかのストレスを受けると、植物にダメージを負うことにも・・・。
ひとも、あたらしい環境に変わったときはストレスを受けやすいものですが、それは植物にとっても、同じことが当てはまります。
主に植物がストレスを感じるときは、環境の変化によるものが多く、具体的には下記のような場面でストレスを感じます。
- 強い光の当たらない屋内で育てていた植物を、急に強い光が当たる屋外に出したとき
- 強い光により、葉焼けを起こすことがあります
- 台風などの短期的に強い雨風が、植物に当たったとき
- 葉だけではなく、枝や茎などが折れてしまうこともあります
- 寒い冬に、霜や雪が当たったとき
- 特に霜は植物の大敵なので、凍傷の被害が出てしまうことがあります
- 夏に、植物が耐えられる気温以上に気温が上昇したとき
- あまりの暑さに、体調を崩してしまうことがあります
- 冬に、植物が耐えられる気温以下に気温が低下したとき
- あまりの寒さに、体調を崩してしまうことがあります
そのほか、栄養分や水の与えすぎによっても、植物がストレスを感じることになります。
こういったストレスを受けた植物は、体調を崩し落葉をすることもあるでしょう。
意外と、生育環境がよくなる場合にも、植物にとってはストレスになります。
たとえば寒い屋外から暖かい室内に取り込むときに、徐々に環境に慣らさないとそれは植物にとってのストレスになり、葉を落とすことがあります。
ずっと同じ場所で育てていく場合には、環境の変化によるストレスが発生しづらいですが、育成場所を変えるタイミングや、季節の変わり目に落葉した場合は、ストレスによる影響かもしれません。
6. 生長サイクル
「落葉樹」に限らず、常に緑を付けている「常緑樹」とよばれる植物でも、葉を落とす生長サイクルを持っています。
たとえば、植物が生長し下の葉に光が当たらなくなった場合に、下葉を維持するよりも、高い位置に新しい葉を展開させた方が、効率よく光合成によるエネルギーをつくり出せることもあるでしょう。
この場合は、下葉に余計なエネルギーをつかわないようにするために、下葉を落葉させることがあります。
また特に被害を受けていない葉も、長いあいだ広げていれば、月日が経過していくにつれて、葉の表面にキズや汚れが蓄積していくこともあります。
葉にキズや汚れがついている状態では、光合成にも支障が出ることもあるでしょう。
植物は、「すでに展開している葉を維持していくこと」と「新しい葉を展開させること」を天秤にかけて、光合成効率やエネルギー効率を高められると判断した方を選択する生きものです。
「すでに展開している葉を維持していくこと」のメリットが大きくないのでれば、落葉という選択をします。
このように、植物が生長していく過程で「落葉」は自然に起こるものであり、健康的な植物であっても葉を落とすことがあります。
まとめ
本記事でご紹介してきたように、植物が「落葉」する理由は、季節によった落葉だけではなく、さまざまな理由があります。
「落葉」は、季節の変わり目に引き起こされるもの。といったイメージや植物が枯れてしまう前兆なのでは・・・。といった悪いイメージを抱かれることもあるものですが、一概に悪いものとは言い切れません。
「落葉」は、植物が生命を保っていくために必要なメカニズムであり、植物の生育にとって重要な役割を果たしています。
自然界では落葉した葉が土壌改良剤となり、改良された土壌で植物がまた生長するという、循環が成り立っているのです。
植物は葉を落とす前に葉に預けた栄養分を幹に回収しているため、地面に落ちた葉はすでに栄養分が少なくなっていますが、落ち葉を虫が食べてさらに微生物が分解することで、土壌改良剤として生まれ変わります。
以上です!
紅葉ではありませんが、これまで実際におとずれたお花見スポットを、下記の記事でまとめています。
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