落葉は植物の『知恵』
自宅で育てている植物の調子が、最近よくないな……。
葉っぱが黄色くなり、ポロポロと落ちてきている…。
植物を育てていると、いちどは経験するのが「落葉」という現象。
多くの人が、植物の落葉は「枯れる前兆」だと捉えがちです。
たとえば、厳しい冬の寒さから身を守るため、病気の広がりを防ぐため、あたらしい葉を効率的に育てるため…。
植物はちゃんとした理由をもって、葉を落としています。
この記事では、植物が起こす「落葉」の理由を解説します。

植物が落葉する7つの理由
秋や冬の訪れとともに葉を落とす(落葉樹の場合)
葉を広げつづけても、効率が悪い
秋が深まり気温が下がると、植物はまず、日照時間が短くなるという問題に直面します。
光合成ができなくなり、葉を維持するためのエネルギーさえも、不足しはじめます。
このような状況で葉を広げつづけても、効率が悪いため、自ら葉を落とすことでエネルギーを節約するのが落葉樹です。
葉に蓄えた水分が凍結するリスクがある
葉を落とすことは、凍結によるダメージから身を守る「自己防衛」の手段でもあるのです。
葉緑素を回収すると、葉の緑色が失われる
植物が落葉の準備をはじめると、葉に蓄えている「葉緑素(クロロフィル)」などの栄養分を、再利用するために幹に回収します。
葉緑素を回収すると、葉の緑色が失われ、赤や黄色といった色素が目立つようになります。
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葉のエネルギーを回収する過程で、葉色が変化するのが、紅葉が進む現象です。
葉が黄や赤に色づくのは「カロテノイド」と「アントシアニン」の影響
植物の葉が黄や赤に色づくのは、「カロテノイド」と「アントシアニン」という成分が影響しています。
- カロテノイド(黄色の正体)
- もともと葉の中にある成分
- 葉緑素が回収されると、カロテノイドの黄色が目立つようになる
- アントシアニン(赤色の正体)
- 紅葉が進む過程でつくられる成分
「カロテノイド」や「アントシアニン」は、強い紫外線から身を守ったり、栄養分をスムーズに回収したりするのに役立ちます。
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水分の過不足
水分が不足している
植物の体内に十分な水分がない状態がつづくと、葉っぱが落ちてしまうことがあります。
もし水分が足りない状態で強い光を浴びると、うまく体温を下げられずに、葉が焼けてしまうことがあるのです。
たとえ強い光に当たらなくても、水分不足がつづくと、植物は自ら落葉し、体内の水分が逃げるのを防ぎます。
葉を落とした分だけ、光合成ができる量も減少しますが、葉からの水分の蒸発を防ぐことを優先します。
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自分の命を守ろうとする、植物の生存戦略ですね。
水分が多すぎる
植物は根で呼吸をしていますが、土が常に湿っていると、根が酸素不足に陥ることに…。
湿った土壌はカビや病原菌が繁殖しやすく、弱った根に悪さをすることもあります。
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適切に水やりをしないと、結果的に葉が落ちる原因になるのです。
植物の「水やり」は、習得まで3年かかると言われる難易度の高い作業です。
以下の記事で詳しく解説しているため、ご興味があればお読みください
栄養素(肥料分)の過不足
栄養素(肥料分)が不足している
植物が健康な状態を保つためには、17種類の栄養素が必要
栄養素(肥料分)が不足した状態がつづくと、黄色く変色した葉を落とすなど、さまざまな不調を引き起こします。
特に重要な「三大栄養素」
- 窒素(ちっそ:N)
- 葉や茎を育てる栄養素(葉肥(はごえ)とも呼ばれる)
- 不足すると葉が黄色くなり、落葉する
- カリウム(K)
- 根を丈夫にし、水分吸収を助ける栄養素(根肥(ねごえ)とも呼ばれる)
- 不足すると水分不足になり、落葉につながる
- リン酸(P)
- 花や実をつけたり、根を張らせたりする栄養素(実肥(みごえ)、花肥(はなごえ)とも呼ばれる)
- 不足すると花や実がつかなくなったり、生育不良の原因になる
このうち、葉の成長に大きな影響を与えるのは窒素ですが、相互に影響を与えるのが栄養素の特徴。
たとえば、カリウムやリン酸が不足すると根が元気に育たず、結果的に葉を落とす原因になることも…。
マグネシウムや鉄も落葉に影響する
三大栄養素以外にも、落葉に影響を与える栄養素はあります。
- マグネシウム(Mg)
- 葉緑素の生成に不可欠な栄養素
- 鉄(Fe)
- 葉緑素の生成に必須
栄養素(肥料分)が多すぎる
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多すぎず少なすぎない肥料が、植物にとって理想的です。
肥料は大きく分けて、液体肥料と固形肥料があります
液体肥料と固形肥料の正しい使い方については、以下の記事で詳しくご紹介しています
病害虫の被害
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病原菌の影響
植物の葉が落ちる原因のひとつに、病原菌からの攻撃があります。
特に以下のような病気に感染すると、植物は感染した葉を切り離し、植物全体に被害が拡大するのを防ごうとします。
- うどんこ病
- さび病
- 炭疽病(たんそびょう) など
害虫による食害
以下のような害虫に葉や茎を食べられることも、落葉の原因になることがあります。
- ハダニ
- カイガラムシ
- アブラムシ など
害虫による食害で、光合成や栄養の循環などの機能が損なわれると、植物はエネルギー効率を優先するのです。
栄養を十分に供給できない葉を維持するよりも、その分のエネルギーを他の部分の回復や成長に回した方がよい場合に、葉を落とすのです。
急激な環境の変化
たとえば、次のような状況がストレスの原因になります。
- 日当たりの変化
- 室内で育った植物を、いきなり強い日差しの屋外に出すと、葉が焼けて落葉することがある
- 温度の変化
- 寒い屋外から暖かい室内へ急に取り込むと、植物はストレスを感じて葉を落とすことがある
- 天候の変化
- 台風のような強い雨風にさらされると、植物は物理的なダメージを受けて落葉する
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生育環境がよくなる場合でも、変化が急だと、植物が大きなストレスを感じる場合があります。
同じ場所でずっと育てている場合は、徐々に環境が変化するため、調子を崩したり落葉したりするリスクは低いです。
ただし、場所を移動させるときは、少しずつあたらしい環境に慣らしてあげることが大切です。
特に急激な環境の変化が生じやすいのは、冬から春に差しかかる季節。
以下の記事で、詳しい注意点を解説しています
暑すぎる、寒すぎる
これは、植物が体調を崩してしまったサインです。
冬の寒さは、植物にとって大きな脅威
たとえば、冬の寒さは、植物にとって大きな脅威です。
特に霜や雪にさらされると、葉が凍りついてしまい、凍傷を負うことがあります。
また、植物が耐えられる気温を下回ると、寒さで体調を崩し、葉を落としてしまいます。
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多くの観葉植物は寒さに弱いため、10℃以下まで下がる環境では調子を崩しやすいです。
夏の暑さも、植物には過酷な環境に…。
夏の暑さにも、同じことが当てはまるでしょう。
植物が耐えられる気温を超えてしまうと、暑さに負けてしまい、葉を落としてしまうことがあります。
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ここ最近の酷暑で、調子を崩す植物は少なくありません。
通常の生育サイクル(植物の代謝によるもの)
植物は、健康な状態でも葉を落とします。
たとえば、下の葉が日光を十分に受けられなくなると、植物はあたらしい葉を高い位置に生やす方が効率的だと判断します。
無駄なエネルギーを使わないために、古い下の葉を落とすのです。
また、葉に傷や汚れが溜まると、光合成の効率が低下します。
光合成やエネルギー効率を高めるために、あえて葉を落とすのが、植物の賢い戦略といえるでしょう。
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まとめ
植物が葉を落とす理由はさまざま。
水分の過不足や病害虫、急激な環境の変化など、植物が抱える課題を解決するための手段として、葉を落とすのです。
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植物が自ら葉を落とすのは、自身の身を守り、効率的に成長をつづけるための合理的な選択と言えます。
もし育てている植物が葉を落としはじめたら、それは植物からのサインかもしれません。
焦らずに、そのサインを読み解くことが、植物と長く付き合っていくための第一歩になるはずです。
植物が枯れてしまう原因と対策については、以下の記事で解説しています
よろしければ、あわせてお読みください


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