コーデックスを育てる
葉を観て楽しむ「観葉植物」は、成長期には2週間に1回程度の頻度で液体肥料を与えることが、基本的な肥料の与え方になります!
多くの「観葉植物」は、肥料分が多めに含まれている土壌で暮らしているので、適度に肥料を与えることで、健康的に育っていきます!
「観葉植物」に限らず、植物は自生地の環境に近づけることで、本来の調子のまま成育していくもの!
根や茎など身体の一部を肥大させる塊根植物や、ロゼット状に葉を展開させるアガベなどの「コーデックス」が暮らしている地域の土壌には、肥料分が少ないと聞きます。
ということは、肥料をまったく与えない方が、健康的に成長するのではないでしょうか!?
本記事は、そんな「コーデックス」に与える肥料について、ご紹介しています
「コーデックス」の自生地の土壌
「コーデックス」は、肥料分のほとんどない環境で、暮らしているイメージを抱いている方が多いのではないでしょうか!?
それは間違いではありませんが、想像しているよりも、自生地では肥料分の原材料となるものは多いもの!
「コーデックス」が暮らしている地域の土壌には、多少の雑草が生えていて、雑草が枯れて土に還ることで堆肥がつくられています!
また虫の死骸なども、長い時間をかけて微生物に分解されることで、やがて植物にとっての栄養分になるでしょう。
さらに雨が降ることによって、空気中の窒素や土壌中のミネラルが溶け出して、土の中に浸透していくことで「コーデックス」の根に吸収されることになります。
そのため「コーデックス」は、まったく肥料分が含まれていない土壌で暮らしているわけではなく、少ないながらも肥料分が含まれている土壌で暮らしているのです!
自生地の土壌の環境に、「コーデックス」を健康的に育てるヒントが転がっているでしょう
「コーデックス」にとって望ましい成育環境
「コーデックス」の成長に必要な要素
植物の成長に必要な要素は、5つあります!
その要素は、「光」、「水」、「風」、「温度」、「肥料分」です!
これは「コーデックス」にも同じことが当てはまり、この5角形のバランスを保つことができれば、健康的に育つことができるでしょう!
自生地の土壌から判断すると、「コーデックス」は多少の肥料を与えた方が健康的に育ちますが、それはほかの4つ条件を適切に保つことができる場合のみのお話です!
それでは、コーデックスにとって望ましい「光」、「水」、「風」、「温度」のバランスとは!?
- 「光」:強め
- 「水」:少なめ
- 「風」:適度に必要
- 屋外であれば問題ないが、室内ではサーキュレーターで風通しを良くする必要あり
- 「温度」:20~35℃(夏型)
すべての「コーデックス」が、同じ成育環境で健康的に育つものではなく、品種ごとに好きな環境には違いがあります。
特に、春から秋までの暖かい季節に成長する“夏型”の品種と、秋から春までの涼しい季節に成長する“冬型”の品種では、得意としている「温度」に大きく違いが出るでしょう。
ただ、成長に必要な5つの要素を適切に保ち、きれいな5角形をつくりあげていくことで、健康的に育つということはすべての品種に当てはまります!
光・水・風・温度・肥料分のバランスが崩れたら!?
「光」、「水」、「風」、「温度」、「肥料分」の5つのバランスが崩れてしまったら、すぐに「コーデックス」が枯れてしまうわけではありませんが、本来のユニークなカタチが崩れてしまうこともあります。
お饅頭のようにまん丸としていたり、ギュッと詰まっている“カタチ”を楽しむ「コーデックス」にとって、“カタチ”が崩れてしまうことは、本来の楽しみ方ができないことにも・・・。
葉や枝など、植物の身体の一部が不健康に間延びしてしまい、本来のカタチが崩れてしまうことを、園芸用語では「徒長」(とちょう)といいます。
「コーデックス」を育てているひとが、肥料を控えめにしたり、まったく肥料を与えないひともいるのは、「コーデックス」を枯らさないためというよりも、植物が徒長してしまうことを防止するためです!
一度、「コーデックス」を徒長をさせてしまうと、なかなか元の姿に戻すのはむずかしいもの・・・。
なんとか株のカタチを自分好みのままキープするために、「コーデックス」の愛好家は、日々いろいろな試行錯誤を繰り返しています!
「コーデックス」に必要な肥料
園芸業界には、植物の成長に大きな影響を及ぼす肥料成分の「三要素」とよばれている成分が存在します!
- 窒素(チッ素)
- リン酸
- カリウム
「コーデックス」の成育にもこの三要素が重要になりますが、それぞれの肥料成分には特徴があるので、特徴を踏まえて与えていく必要があるでしょう!
ひとつずつ、肥料成分の特徴を確認していきます!
1:窒素(N)
まずは、「窒素(N)」から!
「窒素」は、植物の「葉」や「茎」の成長を促進させる肥料成分です!
「窒素」を適切に与えることで、健康的に茎を伸ばし、本来の緑色をした葉を展開させてくれるでしょう!
「窒素」が不足すると、葉の色が薄くなり、植物の成育に悪影響が出ます。
反対に窒素を与えすぎてしまうと、葉や茎はどんどん成長していくものの、お花や咲きづらくなり結果として実が付きにくくなることにも・・・。
葉の色が薄くなったり、茎がヒョロヒョロした場合には、「窒素」の量を調整していくことが求められます!
2:リン酸(P)
つづいて、「リン酸(P)」です!
「リン酸」は、植物の「花」や「実」の成長を促進させる肥料成分です!
「リン酸」を適切に与えることで、お花を咲かせやすくなり、たくさんの実をつけることになるでしょう!
「リン酸」が不足してしまうと、咲かせるお花の数が減るなど、植物にとって悪影響が出ることにも・・・。
一般的に、肥料は与えすぎると植物に悪影響を与えることになりますが、「リン酸」は過剰に吸収しても植物に影響は出にくい肥料成分だとされています!
3:カリウム(K)
三大要素のさいごは、「カリウム(K)」です!
「カリウム」は、植物の「根」の成長を促進させる肥料分です。
「カリウム」を適切に与えることで、植物の成育の基礎となる根の成長が促進されるので、成育するための土台がしっかりとつくられることになるでしょう!
「カリウム」が不足してしまうと、根の成育が進まないだけではなく、結果として葉や茎、お花や実にも影響を及ぼすことになります。
根は、植物の健康的な成長に、なくてはならない存在といえるのです。
「カリウム」は、「リン酸」と同様に、植物が過剰に吸収しても、悪い影響は出にくい肥料成分とされています。
上記「三要素」のほかに、「カルシウム(Ca)」「マグネシウム(Mg)」を加えたものを「五要素」といいますが、植物の肥料が入っているパッケージには、「三要素」の成分量の記載はあるものの、「五要素」は記載されていないことが一般的です。
「五要素」を考えていくよりも、まずは「三要素」を重点的に考えていくことが重要です!
肥料成分のまとめ
以上をふまえると、「コーデックス」に与える肥料成分は、「窒素」の与えすぎに特に気を付けた方が良いでしょう!
「窒素」を与えすぎてしまうことで、「コーデックス」が徒長してしまうリスクを高めることになります。
また、「コーデックス」が咲かせるお花は、もちろんキレイなものですが、お花や実をつける姿をメインの楽しみ方として考える場合は「リン酸」を適切に考えていく必要があります!
ただ、「コーデックス」の楽しみ方は、お花などをメインで考えていない場合も多いので、「リン酸」の重要性はそこまで高くないといえるでしょう。
さいごに「カリウム」は、積極的に与えたいところ!
植物の成長に欠かせない根を、どんどん成長させることで、どんどん強い植物に育て上げることができます!
- 「窒素」:控えめに与える
- 「リン酸」:重要性は低い
- 「カリウム」:積極的に与える
「コーデックス」に与える肥料の定番としては、「窒素」や「リン酸」がそこまで多くなく、「カリウム」は多めに配合されているハイポネックスの微粉タイプの肥料です!
多肉植物専門店などでも、この肥料が使用されている光景を見ることがあるので、植物のプロにも選ばれている肥料といえるでしょう。
植物に与える液体肥料と固形肥料については、下記の記事で詳しくご紹介しています。
「コーデックス」に肥料を与えるタイミング
「コーデックス」は、成長期と休眠期の成長サイクルを繰り返している生きものです!
夏型の品種であれば、暖かい季節が成長期となり、涼しい季節は休眠期になります。
冬型の品種はその逆の成長サイクルとなり、涼しい季節が成長期、暖かい季節が休眠期となります。
「コーデックス」が成長期を迎えているタイミングでは、肥料を吸収した方が健康的に成長しますが、休眠期には肥料を必要としなくなるもの。
休眠期に肥料を与えてしまうと、逆に体調を崩してしまう原因にも・・・。
成長期をしっかりと見極めた上で肥料を与えることが、「コーデックス」を育てていく上で、重要な要素といえるでしょう!
そして、休眠期から明けた場合には、一気に肥料を与えるのではなく、最初は控えめに与え、その後は株の様子をみながら、徐々に頻度を増やしたり希釈率を上げていくことがポイントです!
また、成長期から休眠期に差しかかる場合も、一気に肥料を切るのではなく、徐々に減らしていくことが望まれます。
「コーデックス」を含めて、植物は全般的に、環境の変化にはデリケートな性質をもっています。
いきなり環境をガラッと変えるのではなく、環境を変える場合でも徐々に変えていくことで、「コーデックス」に大きなストレスを与えることなく、育成することができるでしょう!
たとえば、冬から春に変わる場合は植物にとって良い環境に変わることになりますが、環境の変化は植物にストレスを与えるので、慎重に育てていきたいところです!
「コーデックス」の品種ごとの特徴
一概に「コーデックス」といっても、その品種数は多岐にわたるものです!
「コーデックス」の品種によって、適切な肥料の頻度や量は異なるので、品種ごとに違いについてご紹介していきます
徒長をおそれずに肥料を与えたい品種
毎年のように枝を剪定をしていき、塊根部分を徐々に肥大させていく品種や、枝を剪定してもあまり剪定した跡が目立たない品種は、枝がヒョロヒョロとした姿に成長してもあまり問題ありません!
肥料を与えすぎて株が徒長したとしても、徒長した部分を剪定すれば解決することが多いので、徒長のリスクをおそれずに、肥料を与えていきましょう!
たとえば、下記のような品種は、積極的に肥料を与えても問題ない品種です。
- プセウドボンバックス・エリプティクム(Pseudobombax ellipticum)
- アデニア・グラウカ(Adenia glauca)
- センナ・メリディオナリス(Senna meridionalis)
- 亀甲竜(Dioscorea elephantipes) など
ただし、あまり徒長をさせ過ぎてしまうと株が体調を崩すことがあるので、徒長が過度に進行しないようにほどほどに留めることには注意したいところです・・・
徒長しても立て直しやすい品種
「コーデックス」の中には、少し時間がかかるものの、徒長してしまっても立て直しやすい品種もいます!
植物の中心部から新しい葉が展開し、古い葉は時間の経過とともに下葉となり、やがて落葉していく品種は、比較的元の姿を取り戻しやすい特徴をもっているといえるでしょう!
たとえば、立て直しやすい品種には、下記のような品種があります。
- アガベ(Agave)
- ディッキア(Dyckia) など
「コーデックス」の仲間ではありませんが、同じ多肉植物の仲間である「ハオルチア」や「エケベリア」、「グラプトベリア」といった品種もリセットがしやすい植物になります!
また、徒長した株を元の姿に戻すわけではありませんが、開花しやすく受粉も比較的スムーズにできる「コーデックス」は、株が徒長してしまっても、たねをまいて新しい個体をつくることもできるもの!
リセットという意味では、子株を分ける「株分け」や株を真っ二つにする「胴切り」も、たね蒔きと同じように選択肢になるでしょう!
もし株が徒長した場合には、「コーデックス」にとって望ましい「光」、「水」、「風」、「温度」、「肥料分」のバランスが崩れているということなので、適切なバランスを考え直して、適切なバランスに保つ必要があります!
品種によりますが、バランスが適切であれば1年から2年ほどで、ある程度崩れてしまった「コーデックス」をもともとのユニークなカタチに戻すことができます!
いちど徒長してしまうと、立て直しづらい品種
株をいちど徒長させてしまったら、1年や2年ほどではもともとのカタチに戻すことはできず、場合によっては、カタチを立て直すことが困難な品種もあるでしょう・・・。
肥料を与える場合でも、ほかの品種よりも慎重に与える必要があります。
- パキポディウム(Pachypodium)
- サボテン(Cactus)
- ユーフォルビア(オベサやギラウミニアナなど)
最初は肥料をまったく与えないぐらいで育てはじめ、その植物の性質を把握してから、肥料を与えるぐらいでもちょうど良いかもしれません!
「コーデックス」は、多少肥料を忘れたとしても、不調を訴えることはあっても枯れるリスクは少ない生きもの。
積極的に肥料を与えた結果、株を徒長することになれば、「コーデックス」に対して苦手意識が芽生えることにもなりかねないので、焦らずにじっくりと育てていきましょう!
まとめ
「コーデックス」にとっての肥料は、うまく与えることで早く成長させることもできますが、適切に与えることができないと「徒長」という致命的なダメージにつながってしまうこともあります。
諸刃の剣ともいえる肥料の存在ですが、コツさえつかめば「コーデックス」にとって肥料は大きな味方になるでしょう!
「コーデックス」のユニークなカタチをキープしたいだけなら、肥料は控えた方が良い場合もありますが、どうせ育てるなら健康的に育てつつカタチをキープしたいところです!
以上です!
本記事では、「コーデックス」の肥料について、ご紹介しました!
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