水-風-光で暑さが和らぐ
最近では25℃以上となる“夏日”を通り越し、30℃以上となる“真夏日”は当たり前、もはや35℃以上の“猛暑日”まで当たり前になりつつあります。
高い温度やジメジメした湿度、肌が痛いぐらいの強い直射日光がジリジリとふりそそぎ、やっと風が吹いたと思っても風すらなんだか生ぬるい。
暑い季節はこまめな水分補給や塩分補給、紫外線対策など、熱中症への対策が必要となる季節です。
植物の中には、主に夏に旺盛に成長する“夏型”といわれる品種もいます。
夏型の植物は灼熱の炎天下でこそ急成長を見せるかと思いきや、日本の高温で多湿な真夏は、夏型の植物にとっても暑すぎる環境となる場合が多いです。
最近では、街なかの公園に生えているとても大きな樹木ですら、暑さで弱っている光景を見かけることもあり、自宅で育てている植物も夏の暑さで調子を崩してしまうこともあります。
本記事では、夏の季節における「植物の暑さ対策」をご紹介しています!
しっかりと暑さ対策を講じ、植物と一緒に暑い夏を乗り切りましょう!!
暑さが植物に与える影響
まずは暑さが植物に与える影響について、確認しておきます。
葉焼け
夏の季節は、植物の葉が変色したり斑点がでてきたり、葉の一部またはすべてが枯れてしまう現象である「葉焼け」を起こしやすくなります。
それでは、そもそも植物が起こす「葉焼け」は、どのような原因により引き起こされるのでしょうか!?
- 直射日光
- 長い時間、強い光が当たることで葉の細胞が傷つくことが、葉焼けの原因となります。
- 高温多湿
- 葉の表面から水分の蒸発が進んで、葉が水分不足に陥ることで葉焼けへとつながってしまいます。
- 風通しの悪さ
- 風が無いと、植物を取りまく熱環境が上昇しすぎるので、葉焼けへとつながってしまいます。
- 水不足
- 葉に供給するための水分が足りなくなることが、葉焼けの原因となります。
- 薬害
- 暑さで植物が弱っているときに殺虫剤や殺菌剤などを使用すると、植物へのダメージにもつながり、結果として葉焼けの原因となります。
適度な温度上昇は植物にとってプラスに働きますが、夏は気温が上昇しすぎたり、土が乾く速度が早すぎたり、植物の体内に蓄えている水分がどんどん蒸発してしまい水不足に陥ったりと、「葉焼け」の原因となる要素が重なる時期となります
根腐れ
また、夏には葉焼けだけではなく、「根腐れ」の原因となる要素が重なる時期でもあります。
植物の根が呼吸できないことによって生じる「根腐れ」ですが、発生原因には下記のようなものが挙げられます。
- 水やり(水分過多)
- 夏の季節は水分不足を気にする余り、水やりの頻度を高めにしがちですが、土が乾いていないのに水やりをすることで土の中が常に湿った状態になり、根腐れが起こりやすくなります。
- 排水性
- 鉢内や鉢底などの排水性が悪いと、同じく土が乾きづらい環境となり、根腐れが起こりやすくなります。
- 通気性
- 植物を取りまく通気性が悪いと、土が乾きづらいだけではなく植物が必要とする酸素が不足し、根腐れが起こりやすくなります。
- 根詰まり
- 植物が成長し根が詰まっていると、土が乾きづらくなることや根に酸素が行き届かなくなることになり、根腐れが起こりやすくなります。
- 日当たり
- 日当たりが悪すぎる環境では、同じように土の乾きづらさにつながるので、根腐れが起こりやすくなります。
土が乾きづらい環境や、根に酸素が行き渡らなくなることで生じやすくなるのが、「根腐れ」の特徴です。
水分が不足しすぎると「葉焼け」を引き起こしやすくなり、反対に水分が充足しすぎると「根腐れ」のリスクが高まるので、「葉焼け」と「根腐れ」には、相反する特徴があるといえます。
夏の季節は、植物が不調を起こしやすい季節ですが、具体的にどのような対策がとれるのでしょうか!?
植物の暑さ対策
植物への具体的な暑さ対策は、ひとが行いそして家庭によってはペットに行っている暑さ対策と、同じことをしてあげることです!
ひとも屋外が暑すぎれば、なるべく室内のエアコンの効いた場所に避難すると思います。
また屋外に出る場合には、水分をよく飲み、うちわや扇子でパタパタとあおいだり、ハンディファンを使用したり、なるべく直射日光に当たらず日陰になっているスペースを歩いたりすることで、多少なりとも暑さを抑えることができます。
これと同じことを行うことで、植物の暑さ対策を行うことができます!
植物の性質を理解する
まずは、暑さ対策を講じる前に、植物の性質を理解することが大前提となります。
植物は春に旺盛に成長をはじめ、夏の間は暑さで成育が緩慢になり、秋ごろにまた気温が落ち着いたタイミングで成長が再度加速し、冬の間は寒さの影響で成育が緩やかになるという品種だけではありません。
夏の間にグーンと大きな成長を見せ、春と秋には徐々に成長をし、冬の間はほとんど動きがなくなる品種もいれば、逆に冬の間に大きく成長する植物もいます。
育てている植物の性質を知らないと、夏に暑さを避けた方が良いのか、それとも夏の間も直射日光もなるべく当てた方がよいのか。
適切な育成方法が、どのようなものなのか把握できず、植物にとって望ましい環境を提供できません。
実際に育てている植物のことがよく分からないのであれば、まずは、植物の性質を理解することから始めるのがベストです!
めずらしい植物だと、植物の情報がなかなか収集できないこともありますが、その場合はすこし過保護に育てていきながら、徐々に植物の性質を把握していきましょう。
植物に不調のサインが出たら暑さ対策を講じるのではなく、暑さ対策を講じた上で育成し、もし大丈夫そうであれば育成するために暑さ対策を徐々に緩めていくのが、この時期に無難な育成方法です。
日当たりを調整する
植物は、太陽光を浴びて光合成によってエネルギーをつくり出し、成長をしていく生きものです。
植物が成長をしていると、育てている側まで元気を分け与えてもらえますが、この季節には“植物の成長”をもっとも優先的に考えることはせず、暑さを乗り越えることを最優先に考えた方が良いでしょう。
春から急成長を見せていた植物ですが、この時期はガラッと育成環境を変更するぐらいでちょうど良いです。
“日当たり”への具体的な対策は、下記のようなものが挙げられます。
- 日陰に移動する
- 鉢に植えている植物であれば、もっとも確実で、日陰の場所さえ確保できれば簡単な方法です。季節が変われば徐々に日当たりは変わっていくので、日々の観察が重要です。
- 遮光ネットを使用する
- 遮光率によって光の強度を調整できる遮光ネットは、植物を最低限育てることもできるので、とても便利な方法です。100円ショップでの取り扱いもあり、入手しやすく手軽な方法といえるでしょう。
- すだれやよしずを使用する
- 自然素材のものを使用する方法です。遮光ネットを使用するよりも、設置場所は限定されますが、植物に当たる光の量を軽減させることができます。
- 日傘を使用する
- 以前利用していた通勤路で、植物のためにお庭に日傘を設置している光景を見かけたことがあります。(そんな方法もあるということで。)
Amazonなどでも遮光や断熱、さらに防雨の効果ももったネットを購入することはできます。
水やりのタイミングに気を付ける
春と秋の暖かくて植物が旺盛に成長するタイミングであれば、そこまで水やりの時間帯を選ばずとも、植物は水を吸い上げて成長につなげてくれます。
ところが、夏の季節には“葉焼け”や“根腐れ”のリスクが転がっているもの。
この季節に水やりに適した時間帯は、「朝」と「晩」になります。
最近は温暖化が進行し、朝でも晩でも気温が高いことに変わりはありませんが、日中の気温が高いタイミングで水やりをしてしまうと、植物の失敗につながりやすくなります。
少しでも涼しい時間帯に水やりをすることで、植物を枯らしてしまうリスクを抑えることができるでしょう。
それでは、「朝」と「晩」とは具体的に何時のことなのでしょうか!?
- 朝:8~9時のタイミングでは、すでに太陽もだいぶ上に昇っていて、気温も上がっています。
- 時期よって変わってきますが、ベストな時間帯は、日が昇る直前の時間帯です。
- 晩:16~17時のタイミングでは、まだ直射日光が強いタイミングもあります。
- 太陽が沈み、直射日光が弱まったタイミングがベストです。
普段起床する時間帯がそこまで早くないのであれば、晩(夕方以降)に水やりをするのを習慣化し、日の出ぐらい起床時間が早いのであれば、朝水やりをしても構いません。
時期によって太陽が昇っている時間帯は異なるので、直射日光がいつからまたはいつまで当たっているかをひとつの判断基準としましょう。
日中にどうしても、水切れが進んでしまった場合は、一時的に日陰などに避難させることも重要です。
水やりについては、別の記事で詳しくご紹介しているので、ご興味があればお読みください。
鉢を二重にする
植木鉢を二重に重ねる“二重鉢”は、夏の厳しい暑さから植物を守るための有効な手段です。
特に、黒い鉢は太陽光からの熱を吸収しやすいので、黒い鉢を使用しているのであれば、二重鉢をしたときに恩恵を受けやすいです。
二重にする鉢(外側の鉢)と内側の鉢の間には、軽石や土を入れることで重さが増し、安定性が増すので台風などの強風対策にも効果を発揮します。
ただ、外側の鉢と内側の鉢の間に軽石などを入れなくても、鉢と鉢の間に空気の層ができます。
この空気の層が、断熱性を向上させる役割を果たし、鉢の外側から伝わってくる外気の熱を遮断してくれるので、植物が植わっている鉢内の温度上昇を抑制する役割を果たしてくれるのです。
そのため、鉢と鉢の間に軽石などを入れなくても、二重鉢のメリットを受けることができます。
また、アルミホイルで植木鉢を覆うことでも、暑さ対策を講じることができるでしょう。
素焼き鉢や、最近の3Dプリンターでつくられた通気性重視の植木鉢は、鉢底だけではなく鉢の側面からも水分が蒸発していきますが、二重鉢にすると側面からの水分蒸発が抑制されることとなります。
そのため二重鉢にした場合には、水やりの頻度を少し減らして根腐れ防止を図っていく必要があることには、注意が必要ですね
周囲に水をまく
水をアスファルトなどにまく“打ち水”をすると、蒸発する際に気化熱を奪ってくれることから、付近の温度を下げることができます。
お風呂上がりに、体についた水分をバスタオルで拭き取らないと、寒くなってくるのはこの気化熱による効果です。
植物が育つ鉢の周辺や、植木鉢に水をかけることで、周囲の温度や鉢の表面の温度を下げることができ、植物の暑さ対策となるでしょう。
特に、熱を蓄えているコンクリートやアスファルトには打ち水の効果があらわれやすく、効果が感じ取れるはずです。
植木鉢にのみ打ち水をしようとしたところ、鉢内の植物にまで誤って水がかかってしまうことがあるので、植木鉢に打ち水をするときには、水やりをするときに併せて鉢の側面にも水をかける程度にとどめましょう。
打ち水に適した時間帯は、水やりと同じように「朝」か「晩」です。
日中に行っても水がすぐに蒸発してしまい、周囲の湿度を上げるだけで、思ったような効果が得られません。
風通しの良い場所に置く
植物は自らの葉の表面から水分を蒸発させ(これを“蒸散”といいます。)、気化熱を奪うことによって体温調整を行い、体温が高温になり過ぎるのを防いでいます。
風通しが悪い環境では、葉の周囲を漂う空気は飽和状態となり、蒸散がスムーズに行われません。
反対に風通しが良い環境では、常に新しい空気が植物の葉に触れることになるため、蒸散がスムーズに行われることとなり、結果として植物の体温を下げることができます。
また風通しの善し悪しによる影響は、葉だけにとどまらず、根にも影響を与えます。
土の中の酸素は、植物の根の呼吸にとって必要不可欠です。
風通しが悪いと土の中の酸素が不足し、根の呼吸がスムーズに行われませんが、風通しが良い環境では、新鮮な空気が土の中にまで入り込み、植物の根の呼吸がスムーズに行われることになります。
さらに、風通しは土の乾きやすさにも影響を与えます。
土が乾きづらいと土の中で雑菌が繁殖するなど、植物にとって棲みづらい環境となってしまうでしょう。
- 植物を複数育てている場合は、鉢同士の間隔を開ける
- 鉢が密集していると、風が抜けていきづらくなります
- 鉢を地面に直接置かず、台の上などに置き、鉢の下に少し空間を開ける
- ガーデニングショップでも、鉢を上に乗せることで通気性を確保できる台が売っています
- 剪定をする
- 可能であれば、夏を迎える前に行うのがベストです
植物系Youtuberカーメン君と、DAIMのコラボで開発された鉢スタンドも入手可能です。
鉢底から害虫の侵入を防止してくれる効果も、期待できるスタンドです。
葉水をかける
植物の葉に霧吹きで水をかける“葉水”も、夏の暑さに取れる対策のひとつです。
こちらも、打ち水と同じように気化熱の効果を利用したものです。
植物の葉は、体内に蓄えている水を葉の表面から取り出し、取り出した水を蒸発させることで、体温を調整しています。
葉の表面に水をかけてあげれば、この打ち水の効果を人工的につくってあげることができます。
直射日光に当たっているタイミングで葉水を行うと、レンズ効果により植物の葉が焼けてしまうことになるので、やはり葉水に適した時間帯も「朝」か「晩」となります。
葉水は、サボテンなどの多肉植物に与える必要はありません。
むしろ乾燥を好む植物に葉水を行うと、乾燥した環境から真逆の環境をつくってしまうことになるので、避けましょう。
薬剤や肥料の使用はなるべく避ける
夏の暑い時期で植物が夏バテをしているからといって、殺菌殺虫成分のある園芸用の薬剤を使用することは、植物にとっては逆効果となるでしょう。
真夏の高温時には薬剤の成分が活性化していることや、植物の体力が衰えていることなど、複数の悪条件が重なり植物の葉や茎が薬剤によって傷んでしまうことがあります。
また薬剤だけではなく、肥料についても同様のことが当てはまり、真夏の暑さでは植物の体力が低下し根も弱っているため、弱った状態の根は肥料を吸収しにくくなっています。
そのため、春や秋などの季節と同じ濃度の肥料と同じ頻度で与えていると、肥料によって植物にダメージが出る“肥料焼け”を起こしやすくなるのです。
目安としては猛暑日が35℃以上となる猛暑日は、肥料の使用を避け、薬剤の使用も控えた方が良いですが、害虫が大量に発生した場合など、どうしても薬剤を使用しなくてはならない状況のときには、最高気温が高くならない日を選んで使用したり、普段育てている場所よりも涼しい場所に移動して、薬剤を使用することをオススメします。
それでも、薬剤による被害を完全になくすことはむずかしいので、使用しなくてもいい状況であれば使用を控えることが無難です。
肥料についても、別の記事で詳しくご紹介していますので、もし興味があればお読みください。
植物の植え替えは鉢増しに限定する
夏の時期にグングンと成長する植物を除き、この時期に植物の植え替えをするのは、極力控えましょう。
この時期は高すぎる気温に加えて日差しが強く、植え替えによるストレスで植物の根にダメージが出ると、植物が一気に枯れてしまうことにつながります。
植え替えは鉢から植物を抜いてまた新しい鉢に植えていく作業ですが、鉢から出した植物の根についた土を取り除くことや、新しい鉢に植えた後に根のすき間に土を流し込む植え替え作業によって、植物の根はどうしても切れたり傷んだりしてしまいます。
ただでさえ、真夏の季節には厳しい暑さによって水不足になりやすい時期なので、この時期に根へのダメージが出ると水分を吸い上げることができずに、深刻な問題へと発展することにも。
特に植物が病害虫の被害や葉焼けなど、植物が弱っている場合は、植え替えをするとさらに弱ってしまい、致命的なダメージへとつながってしまうこともあります。
この時期に、どうしても植え替えをしなくてはいけない状況があるとすれば、植物が大きく成長して鉢サイズが小さくなってしまう“根詰まり”の状況ですが、この場合に植え替えをするときにも、なるべく植物の根は触らずに鉢のサイズを大きくする“鉢増し”だけに限定しましょう。
ただ、鉢増しも少なからず植物の根にダメージを与える原因となるので、秋まで待てるのであれば待った方が無難です。
植え替えをした後に、涼しい室内の場所を確保できる場合を除いて、植え替えは厳禁です
どうしても植え替えをした後には、水やりをした後に鉢底から水が流れ出てくるまで水をしっかりと与えて、植物の体内に水が行き渡るようにしましょう。
過度な剪定をしない
枝先数センチ程度など、枝葉のカタチを整える程度の剪定であれば、夏の時期に行っても問題ありません。
むしろ枝葉が密集していて風通しが悪い環境なのであれば、風通しを改善する目的で剪定をすることは、植物にとってプラスに働くこともあります。
しかしながら、この時期に不必要な剪定を行うことで、剪定をした断面から植物の樹液が流れ出てしまい、植物の水不足が深刻化するリスクも抱えています。
なるべく植物に負荷をかけないことを優先にするのであれば、真夏に入るまでに剪定を終わらせることや、場合によっては秋まで待ってから行った方が無難です。
トリコームやブルームを取らない
特に多肉植物など、強い光の環境の中で自生している植物の中には、強い光や蒸散を防ぐ目的で、葉の表面に粉を付けている品種がいます。
この粉は“トリコーム”や“ブルーム”などと呼ばれますが、この粉がはがれてしまうと、植物が身を守るための力が低下してしまうことになります。
水やりの際に多少上から水をかけたぐらいでは、多量の粉が落ちてしまうことはありませんが、葉の表面を不必要に触ったりしていると粉が落ちてしまい、葉焼けなどのリスクが高まることにも。
粉を身にまとっていた方が植物の美観的にもキレイなことが多いので、粉をつけている植物にはむやみやたらに触らないようにし、そっと見守るようにしましょう。
また雨に直接当たるような環境でも粉が落ちてしまうこととなるので、粉を付ける植物は、できれば軒下など雨が直接当たらない環境で育てることをオススメします。
まとめ
本記事では、植物が真夏の暑さを乗り切るための対策についてご紹介しました。
植物の暑さ対策を講じるために、植物を育てているひとが夏バテでへばってしまうと、植物の面倒にまで気力や体力が向かわないことにも・・・!
まずは、しっかりと自分自身の健康管理に努めて、植物の面倒をみるための体力を養い、植物と一緒に暑い季節を乗り切っていきましょう!!
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