根や茎を肥大させた植物
植物には、暖かい季節に成長する「夏型」の品種、涼しい季節によく成長する「冬型」の品種、そして「冬型」と「夏型」のあいだに位置する「春秋型」の品種がいます!
本記事では「夏型」の植物、特に「コーデックス」と呼ばれる植物に焦点を当て、必要な水やりや日当たりについて、ご紹介しています
是非、これから「コーデックス」を育てはじめるひと、そして「コーデックス」に少しでもご興味があるひとにとって、参考になれば幸いです!
コーデックスとは
「塊根(かいこん)植物」は根を肥大させるタイプの植物のことで、「塊茎(かいけい)植物」は茎を肥大させる植物のことです。
また、「アガベ」はロゼット状に葉を展開し、葉先や葉の縁に鋸歯(きょし)と呼ばれるトゲのようなものを付ける、植物のことです。
「塊根植物」や「塊茎植物」、「アガベ」を総称して、「コーデックス(caudex)」と呼ばれることがあります!
植物は、ある程度の水分を体内に蓄えているので、少しのあいだ雨が降らなくても生きていくことができますが、「コーデックス」は長いあいだ雨の降らない乾燥した地域に自生しているもの。
乾燥した地域で生きていくためには、ほかの植物よりも多くの水分を蓄えておく必要があるため、「コーデックス」は根や茎、そして葉などの部分を肥大させることで、体内に多くの水分を蓄えておくことができるように進化した植物です!
ユニークな見た目で、最近では、街なかにあるお花屋さんで見かけることもあります!
コーデックスの現地球と実生株
「コーデックス」には、海外の自然の中で育っている植物を採取して、日本に輸入した「現地球(げんちきゅう)」と、日本国内でたねから発芽させて、そのまま国内で育てられている「実生(みしょう)株」があります!
それぞれに特徴があり、育て方も変わってくるので、まずは特徴を整理していきましょう!
現地球(げんちきゅう)
「現地球」は、すでに一定のサイズまで成長していて、見た目にもワイルド感があふれていますが、ある程度の大きさになるまで海外で成育してきているので、日本の環境に慣れるのがむずかしい特徴をもっています。
また、海外から輸入するための費用もかかっている分、販売金額も高額なものが多いです。
自分で好みのカタチにつくり上げるというよりも、すでに完成された見た目をいかにして維持していくのか、という点に焦点を当てて楽しまれる植物といえるでしょう!
海外から輸入して間もない株などは、土を落とした状態の「ベアルート株」、根が生えていない状態の「未発根株」として売られていることも多いので、そういった場合には根を出してもらう発根管理からはじめる必要もあります!
現地球の発根管理ではありませんが、下記でアガベの発根管理の方法について、詳しくご紹介しています
実生(みしょう)株
一方の「実生株」の特徴としては、すぐに現地球のようなワイルド感があふれる見た目に育て上げるのはなかなかむずかしいもの。
なにより時間がかかりますし、育成方法も工夫をしないと葉や茎などが間延びする「徒長(とちょう)」株に成長してしまうことも・・・。
ですが、たねから発芽したときから日本の環境にいることで、「現地球」よりは寒暖差のある日本の環境に慣れやすく、それほど高額ではない価格帯のものが多い点も、特徴のひとつ!
「実生株」はたねから育てている分、愛着がわきやすい面もあるでしょう!
すでに完成された見た目の株をお迎えしたいなら「現地球」、小さいうちから自宅で育て上げたい場合には「実生株」という選択肢が、「コーデックス」をお迎えする基準になります!
また、お財布の中身とも要相談です。
「実生株」をお迎えする場合には、たねから育てる方法もあり、下記の記事でご紹介しています。
【↓多肉植物のたねの購入先↓】
【↓多肉植物のたねの蒔き方↓】
コーデックスの成長する5つの条件
まずは、「コーデックス」の成長に必要な条件を確認しておきましょう!
「コーデックス」の成長には、「光」、「水」、「風」、「温度」、「肥料分」の5つ!
5つの条件を適切に確保することで、「コーデックス」が健康的に、カタチを崩すことなく成長してくれるでしょう!
現地球の育て方
まずは、「現地球」の育て方について!
日当たり
夏型の「コーデックス」が本来育っている地域は、降雨量が少ないことが特徴になります。
雨が少ないということは、雨を降らせるための雲が少なく、「雲が少ない=太陽の光があたる時間が長い」ということになるでしょう。
「コーデックス」が本来は強い光で育っている植物なので、窓から室内に差し込む程度の弱い光でも、元気よく成長していくことはむずかしいです。
室内で育成する場合は、植物育成用のLEDライトを使用することは欠かせません。
下記の「HASU38」という育成ライトは、スポット型のライトの中でも光量が強く、強い光を求める植物にも使用できるオススメなライトです!
植物の室内育成については、下記の記事で詳しく書いています。
「現地球」の株は、なるべく多くの日光を浴びせることが望ましいですが、発根管理中や発根したての状態では、根から充分に水分を吸えていない状態になります。
その状態で、長いあいだ直射日光に当ててしまうと、株が萎んでしまったり葉や株自体が焼けてしまうこともあるでしょう。
根がまだしっかりと定着していない場合には、夏の直射日光は避け、それ以外の季節でも午前中だけ直射日光に当たる場所で育てるなど、光量を調整していくことが望まれます。
また、光だけではなく、環境の変化にも配慮が必要です。
冬のあいだ室内に取り込み強い光を当てていなかった場合、暖かい季節の訪れとともに、「コーデックス」を屋外に出す場合には、徐々に日当たりのよい環境に移動することで、環境の変化によるストレスを軽減させることが必要です。
なおいくら「夏型」の植物といえども、日本のような高温多湿な環境を得意としていないので、日当たりの良い環境でも株の調子が悪そうであれば、日陰に移動したり遮光したりする対応も必要となるでしょう。
あまり厳しい寒さに当ててしまうと株がダメージを負ってしまいますが、春の早いうちから屋外に出しておくと、真夏の強い光にも耐性が付きやすくなります。
水やり
「コーデックス」への水やりは、季節ごとに望ましい方法が変わってくるので、季節ごとに書いていきます!
春~初秋
まずは、暖かい春から秋にかけての水やりについて。
日本は、島国ということも影響していると思いますが、世界の平均値よりも降水量が多い国です!
そのため春から初秋までは基本的に雨ざらしの環境であれば、あえて追加で水やりをする必要はありません。
ただ、しばらく雨が降らない日が続いた場合に、株を触ってみて柔らかいときや、株の表面にしわが出てきたときは水が足りていない可能性があるので、水やりをすることが望まれます。
水やりをするときは葉や株自体から、さらには鉢底からも雑菌や害虫を洗い流すイメージで、シャワーで勢いよく与えるのがベストです!
軒下や室内等の雨が当たらない場所で育てる場合には、習慣的に水やりをする必要がありますが、株の状況に応じて水やりをすることが重要なので、日々観察することが重要です。
株にしわが入ったら水やりをするなどの目安を決めて、水やりをするようにします。
ほかの植物と同じ頻度で与える必要はなく、控えめな水やりをしていくことで、株が徒長することを防ぎ、健康的なカタチをキープすることができるでしょう!
初秋~冬
品種によりますが、夏型の「コーデックス」は秋になると紅葉を見せ、最低気温が10℃前後に突入するタイミングから、葉を落とし休眠状態を入ります。
休眠状態に入ると、葉から水分が蒸散することもなくなるので、ほかの季節よりも水を必要としなくなります。
休眠をした方が寒さには強くなり、「成長期→休眠期→成長期」といった植物の成長サイクルを保つこともできるので、涼しい季節に入ったら徐々に水を少なめにし、「コーデックス」に休眠を促すことが重要となるでしょう。
そして、冬のあいだは断水気味に育てます。
完全に水を切ってしまうと、それまで機能していた根が完全に枯れることになり、春からの成長速度に影響を与えることにもなるので、最低限の水やりは確保したいところです!
ただし、「コーデックス」の体内に水が蓄えられている状態で水やりを継続してしまうと、株が腐ってしまうことにもなりかねないので、暖かい季節と同じような水やりは必要ありません。
冬~春
春になり気温が上昇しはじめたら、株が花芽をあげたり葉の展開を再開したりと、「コーデックス」は徐々に動き出し、休眠状態から目覚めていきます。
「コーデックス」が徐々に動き出しても、一気に雨ざらしの環境に移したり、鉢底から流れ出てくるまで水やりをしたりすることはせずに、最初のうちは少なめの水量で水やりを再開し、徐々に水やりを増やしていくようにすることが重要です!
塊根植物の品種によっては、ひと通り葉が生え揃ってからはじめて水やりを再開するぐらい慎重に育てていかないと、調子を崩してしまうことがあります。
なにごとも、環境の変化は最小限にしていくことで、「コーデックス」を枯らしてしまうリスクを軽減させることができるでしょう!
冬から春に変わるときの注意事項は、別の記事で書いています
風通し・耐寒性
「コーデックス」は、光合成や呼吸を行っている生きものです。
そのため健康的に育てていくためには、風通しの良い環境を維持する必要があるものです。
室内で育成する場合は、サーキュレーターを使用して、空気を循環させることが必要となるでしょう!
空気の流れをつくり出す存在といえば、扇風機を思い浮かべるひとも多いと思いますが、扇風機は近い位置に幅広く空気を送り出せるものの、室内全体の空気を循環させる機能にはそこまで優れていません。
「コーデックス」のためを想うのであれば、なるべくサーキュレーターを準備してあげる方が良いでしょう!
屋外だからといって必ず風通しが良いかというと、そうではない環境も存在するので、なるべく「風通し」があるか確認しながら育成環境を決めていくことが望まれます。
冬(最低気温10℃以下)の成育環境
夏型「コーデックス」は寒さに弱いので、暖かい季節に屋外で育てている場合でも、冬のあいだはある程度気温の保てる室内などへ移動することが望まれます。
最低気温が10℃以上あれば、ほとんどの「コーデックス」は寒さで枯れることはありませんが、中には15℃以下になると体調を崩す品種もいるもの・・・。
冬のあいだには、休眠させるのが「コーデックス」の基本の育て方となりますが、室温が高すぎると「コーデックス」がスムーズに休眠できなかったり、いちど葉を落としていたのに葉の展開を再開させてしまったりと、休眠がうまくいかないこともあるでしょう。
休眠がうまくいかない場合でも断水気味で育てていきますが、葉が展開している分、葉からの蒸散が進み、休眠状態に入っている「コーデックス」と比べると株が凹んでしまうことがあります。
特に、休眠が進まない場合には、株の状況をこまめに観察して、水を欲しているようであれば少量の水やりをします。
ただし、春から初秋ごろまでと同じように鉢底まで流れ出てくるほどの水やりをしてしまうと、土が乾くのに時間がかかり、根腐れを起こしてしまうこともあるので、冬のあいだの水やりは、霧吹きで株全体そして表土を軽く湿らす程度の量に留めた方が無難でしょう。
鉢底から水が流れ出てくるぐらい水を与える場合でも、水やりから2~3日で土が乾くように、サーキュレーターを強めにするなど、根腐れを防止する対策が必要となります。
室内に取り込むタイミング
春から秋に、屋外で「コーデックス」を育てている場合に、いつごろ室内に取り込んだ方が良いのでしょうか!?
基本的には「コーデックス」が休眠に入ったら室内に取り込むのが理想的ではあるものの、室内に取り込む基準を夏型「コーデックス」の休眠のサインである“落葉”に焦点を当ててしまうと、葉を付けたまま寒さで枯れてしまうこともあります。
そのため、室内に取り込む基準は、屋外の“最低気温”に設定することが望ましいでしょう。
「コーデックス」が休眠状態に入っていなくても、最低気温が下がる日がつづいいたら、室内に取り込みます。
暖かい地域であれば、市販の簡易ビニールハウスで越冬する手段も取れますが、関東以北の環境では簡易ビニールハウスだけでは防寒対策が足りないので、室内に取り込む対応が必要となります。
肥料
自生地の環境ではあまり肥料分の含まれていない土壌で育ってきているので、これまで育ってきた環境を一気に崩さないためにも、肥料は少なめに育てます。
土に腐葉土や堆肥などの肥料が入っていると、「コーデックス」が肥料を欲しがっていないタイミングでも肥料に余分に吸収してしまい、成育に悪い影響を与えてしまうことにも・・・。
1ヶ月に1度程度の頻度で液体肥料を与えるか、植物が必要とするときだけ養分を摂取できる「マグァンプ」という肥料を土に混ぜこむことで、「コーデックス」の調子を崩すことなく、株の成長にもつなげられます!
数ある肥料の中で「コーデックス」との相性の良い肥料は、カリウムが多めに配合されている肥料がおすすめです。
カリウムは根の成育に必要な肥料なので、植物の成育にも良い影響を与えるのはもちろん、植物が間延びする「徒長」につながりにくいので、ユニークな姿を楽しむ「コーデックス」にはピッタリな栄養素です!
本記事と内容が一部重複する部分もありますが、「コーデックス」に与える肥料については、下記の記事で詳しく書いています
実生株の育て方
つづいて、「実生株」の育て方について!
日当たり
「実生株」1年目の株は、直射日光を長時間当てるよりも午前中だけ直射日光に当てるぐらいの環境の方が、健康的にまん丸とした見た目に育っていきやすいです!
実生2年目以降から、現地球と同じく長いあいだ、直射日光のあたる環境に切り替えていくことが望まれます。
「現地球」と同じように、室内の環境では光が足りずに、徒長した姿に成長してしまう可能性が高いので、室内で育てる場合には植物育成用のLEDライトを使用していきましょう!
水やり
「実生株」にはまだ体力が備わっていないため、水が足りない状況が続くと調子を崩し、最悪の場合枯れてしまいます。
ある程度の大きさに成長した株に多くの水を与えてしまうと、ヒョロヒョロとした株になってしまうので、切り替えるタイミングがむずかしいですが、特に実生1年目などの小さい株は水は多めに与えた方が健康的によく育ちます!
株が小さすぎるうちは、容器に水を入れて鉢ごと水に浸ける「腰水」を検討しても良いでしょう!
また小さい株を冬に休眠させてしまうと、暖かい季節を迎えても、そのまま休眠から起きずに枯れてしまう株もいます。
数か月のあいだ休眠状態をつづけていく体力が、まだ株に備わっていないのです。
もし可能であれば、1年目は気温の保てる室内で植物育成用LEDの光を当てて、なるべく休眠させずに越冬させる方が無難な育成方法となるでしょう。
肥料
「実生株」のコーデックスは、「現地球」ほどナーバスになる必要はありませんが、それでもやはり肥料の与えすぎは徒長につながってしまいます。
適切な日当たりや良好な風通しが確保できている前提ですが、液体肥料を与える場合は2週間に1回程度を目安にし、「現地球」と同じく、カリウム中心の肥料を使用することが望まれます。
水に薄めて与えるタイプで定番の肥料は、「微粉ハイポネックス」です!
カリウムの割合が高く、窒素やリンは適量といった配分になっているので、「コーデックス」向きの肥料といえるでしょう。
多肉植物専門店でも使用されているので、プロからも選ばれている肥料です。
風通し・耐寒性&冬の成育環境
この点に関しては、「現地球」と同じ対応が必要となります!
少しだけ違う点は、「実生株」は「現地球」よりも寒さに慣らしやすいという点。
徐々に寒さに慣らしていけば、本来の耐寒温度よりも低い温度でも、生きていけるでしょう。
ただし、寒さに慣らそうと思って、枯らしてしまうこともあるので、無理は禁物です!
まとめ
本記事では、「コーデックス」と呼ばれる植物に焦点を当て、必要な水やりや日当たりについて、ご紹介してきました!
「コーデックス」はユニークな見た目からファンも多く、高額な価格で売られていることもしばしば!
できれば、徒長させることなく、カッコイイ見た目をキープしていきたいものです!
育てている環境や地域によっても異なってくる面もあると思いますが、株の様子を見ながらユニークな見た目を維持したり、カッコイイ見た目をつくり上げていくことが重要です!
以上です!
寒い季節に「コーデックス」を楽しむ方法については、下記の記事でご紹介しています
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