コバエがいない植物Life
室内で観葉植物を育てる際、直面することが多い問題のひとつが「コバエ」の発生です。
この小さな虫は、人びとに直接的な危害は加えませんが、植物の生育環境に悪影響を及ぼすことがあります。
観葉植物の土に発生する「コバエ」は、土の中の有機物を餌にする「クロバネキノコバエ」と呼ばれる種類で、対策は以下のとおりです。
- 有機物を避ける
- コバエが好む環境をつくらない
本記事では「コバエ」の発生原因から、寄せ付けないための予防策、発生してしまった場合の対処法まで網羅的に解説します
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本記事の内容を参考に、コバエに悩まされない植物ライフを楽しみましょう!


「コバエ」の正体
多くの人にとって、「コバエ」は不快な存在です。
「コバエ」の繁殖力は驚異的
「コバエ」が厄介な理由は、その驚異的な繁殖力にあります。
- 繁殖スピードが早い
- わずか1日で卵から孵化する
- 単独で増える
- 成虫はすべてメスであり、交尾をせずに、1回で80〜150個もの卵を産む
- 圧倒的な繁殖力
- 1か月程度の寿命の中で、最大5回も産卵する
体が小さいため、網戸をすり抜けられる
多くの人が、
網戸を閉めていれば、コバエが侵入できないだろう。
と考えがちですが、「コバエ」はその小さな体で、網戸をすり抜けて室内に侵入します。
観葉植物の土に発生するのは「クロバネキノコバエ」
- クロバネキノコバエ
- おもに、観葉植物の培養土に発生する
- ショウジョウバエ
- おもに、キッチンやごみ箱などにあらわれる
「クロバネキノコバエ」と「ショウジョウバエ」では、発生源や習性が違うため、対策方法が異なります。
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本記事では、クロバネキノコバエに焦点を当ててご紹介します。
遺伝子学や生物学の世界では、貴重な研究対象となっている
「コバエ」の繁殖力や世代交代が早い点は、短期間で多くの実験を可能にしています。
実際に遺伝子研究や生物学の分野では、重要な知見をもたらしており、人びとの暮らしにプラスに働く側面もあるのです。
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コバエの繁殖力を活かして、ノーベル賞を受賞した研究結果が、いくつも存在します。
観葉植物から「コバエ」が発生する原因
観葉植物からコバエが発生するのはなぜ?
それは、「コバエ」が植物に使用されている土の環境を好むからです。
屋外から飛んできた「コバエ」が、土に卵を産み付けて繁殖することもありますが、もともと土の中に卵が潜んでいることもあります。
それでは、なぜコバエは観葉植物の土に集まるのでしょうか?
「コバエ」が観葉植物の土の環境を好むのは、以下の理由からです。
- 温度や湿った環境がちょうどよい
- 幼虫のエサになる有機物が、土に含まれている
さらに深掘りしていきます
温度や湿った環境がちょうどよい
冬でも暖かい環境になりやすい
多くの観葉植物は暖かい国が原産のため、元気に育てるためには、冬でも10℃以上を保つ必要があります。
冬に室内に取り込んだ観葉植物にとって、過ごしやすい環境を提供すると、「コバエ」がもっとも好む暖かい温度(20℃ほど)になりやすいです。
湿った状態がつづきやすい
観葉植物の土は、表面は乾いていても、土の中は水分を保っていることがあります。
この常に湿った状態も、「コバエ」にとっては格好の繁殖場所になります。
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培養土が劣化している、底石がないなどの場合は、さらに土が乾きにくくなり、コバエの発生を後押ししてしまうでしょう。
幼虫のエサになる有機物が、土に含まれている
「コバエ」が発生するもうひとつの原因は、観葉植物の土に含まれる「有機物」の存在です。
「コバエ」の幼虫は、土に含まれる、以下のような有機物をエサにしています。
- 腐葉土(ふようど)
- 葉っぱが腐敗したものを原料としており、「コバエ」の幼虫のエサになる
- 有機肥料
- 動物のフンや魚の粕などを原料としており、「コバエ」の幼虫にとっての栄養源になる
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有機物が土壌内の微生物を活性化させることで、観葉植物にとってよい環境がつくられます。
しかし、微生物を食べるコバエの幼虫にとっても、棲みやすさが向上してしまうのです


「コバエ」の発生を予防する5つの方法
以下の予防策を取ることで、「コバエ」の発生を抑えられます。
- 土を適度に乾きやすくする
- 有機物が含まれた園芸用土を使用しない
- 有機肥料ではなく、化成肥料を使用する
- 化粧石(化粧砂)を使用する
- 木酢液(もくさくえき)を散布する
土を適度に乾きやすくする
土が乾いてから水やりをする
常に湿った土の中は、「コバエ」が好む環境です。
土の表面が乾いたのを確認してから、水を与えるようにしましょう。
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土が濡れている状態がつづくと、植物が根腐れを起こすリスクも高めてしまいます
受け皿に溜まった水は、水やりの都度捨てる
水やりのあと、受け皿に水を溜めたままにすると、鉢底から常に水分が供給され、土が乾きにくくなります。
水やりのあとは、受け皿の水をこまめに捨てるようにしましょう。
定期的に植え替える
土は徐々に劣化するため、少なくとも2~3年ごとに植え替え、あたらしい土に入れ替えることが望まれます。
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土が劣化すると、排水性や通気性が悪くなり、土が乾きにくくなります
使用済みの土を再利用する場合は、そのまま使わずに、リサイクルする手順を踏んだものを使用しましょう
園芸用土のリサイクルについては、以下の記事で解説しています
サーキュレーターを使用して、風通しをよくする
風通しが悪い場所では、土が乾燥しづらくなります。
室内で植物を育てる場合は、サーキュレーターを使って空気の流れをつくり、土が乾きやすい環境をつくりましょう。
サーキュレーターを使う場合、植物に直接強い風を当てつづけるのではなく、部屋の空気を循環させるように使うのがポイントです。
スリット鉢を使用する
意外と見落としがちですが、植物を植える鉢選びも重要です。
鉢底の側面に切れ込みが入っている「スリット鉢」は、通気性がよく、土が乾きやすい構造になっています。
根腐れ防止にも役立ち、植物を枯らすリスクを減らせる鉢です。
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自宅では、育てている多くの観葉植物を「スリット鉢」に植えています。
植物がグングン成長するため、いちど使用すると、他の植木鉢を使用しにくくなります。
「スリット鉢」については、以下の記事で詳しくご紹介しているため、ご興味があればお読みください
有機物が含まれた園芸用土を使用しない
有機物を避けて植物を育てる方法は、以下の3つの方法があります。
- 無機質の土を使用する
- ハイドロカルチャーで育てる
- 水耕栽培で育てる
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それぞれの育て方について、深堀りします。
無機質の土を使用する
無機質の土を使用し、エサとなる有機物を使わないことで、「コバエ」の発生リスクを大幅に減らせます。
- 赤玉土
- 鹿沼土
- バーミキュライト など
「室内用」や「コバエが発生しにくい」と表示されている土は、有機物を含まない培養土が多く、「コバエ」の発生を抑止できます。
特におすすめなのは、2025年に発売された、以下のプロトリーフの室内向けの培養土です。
硬質タイプで長持ちし、水はけがよいため土が乾きやすく、「コバエ」対策にピッタリです。
ハイドロカルチャーで育てる
ハイドロカルチャーは、土の代わりに、粘土を高温で焼いてつくった土「ハイドロボール」を使う栽培方法です。
- 無菌なため、「コバエ」や他の害虫がわく心配がない
- 見た目がおしゃれなため、インテリア性を高められる
- 劣化しづらく、繰り返し使える
しかし、注意点もあります
ハイドロボールは、土よりも水持ちがよいため、水のやりすぎには注意が必要です。
さらに、根から排出された老廃物を分解する力が弱いため、根腐れを起こしやすいデメリットもあります。
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育て方に少しコツが必要なため、ハイドロカルチャーで育てる場合は、事前によく調べてから試してみましょう。
水耕栽培で育てる
水耕栽培は、土を使わずに水を張った容器で植物を育てる方法です。
「コバエ」のエサとなる土がないため、発生を根本から防ぐことができます。
- 植物のサイズ
- 大きな植物は水耕栽培では安定しにくく、転倒のリスクがあるため、小型の観葉植物に適している
- 手間がかかる
- 水を3~4日ごとに交換したり、容器を掃除したりする必要がある
- 向かない品種がある
- すべての植物が水耕栽培に適しているわけではない


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鉢植えのまま長時間水に浸けるのは、根が呼吸できなくなり、根腐れやカビの原因となるため、やめましょう。
植物の「水やり」については、習得するまでに3年間かかると言われるほど、むずかしい作業です。
以下の記事で、詳しく解説しているので、特に園芸初心者の方は参考にしてみてください
有機肥料ではなく、化成肥料を使用する
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化成肥料を使うことで、コバエの発生リスクを抑えられます。
- 有機肥料
- 米ぬかや鶏糞など、天然由来の材料でつくられているため、環境にやさしい
- コバエが好む有機物を含むため、害虫が寄りつきやすい
- 化成肥料
- 窒素ガスなどの無機物を原料に、化学的につくられている
- コバエのエサとなる有機物が含まれていないため、コバエが発生しにくい
観葉植物を元気に育てたいけど、コバエが発生するのはイヤだ…。
そんなときは、化成肥料を選ぶのがおすすめです。
化成肥料には、以下のように観葉植物専用のものが市販されています。
固形タイプや液体タイプなど、さまざまな種類が市販されているので、植物や環境に合ったものを見つけてみましょう。
「液体肥料」と「固形肥料」の違いについては、以下の記事で詳しく解説しています
うまく使い分けられれば、適切に肥料を効かせやすくなるため、ぜひ参考にしてみてください
化粧石(化粧砂)を使用する
観葉植物の土の表面に化粧石(化粧砂)を敷くことで、「コバエ」の発生リスクを抑えられます。
同じように土を覆う「バークチップ」や「ウッドチップ」は、環境によっては虫のエサになることがあるため、「コバエ」の発生を抑えたいなら無機質で無菌の石を使うのがおすすめです。
化粧石には以下のデメリットもあるため、使う前に理解しておく必要があります。
- 水やりがむずかしくなる
- 土の乾き具合が分かりにくくなるため、水のやりすぎに注意が必要
- 園芸用土をリサイクルするときに、手間が増える
- 植え替えの際に、培養土と化粧石を分ける作業が発生する
特に園芸初心者の方は、ある程度水やりに慣れてから、化粧石を試してみるのがおすすめです。
園芸用土のリサイクルについては、以下の記事で解説しています
木酢液(もくさくえき)を散布する
木酢液は、木を燃やしたときに出る煙を冷やして液体にしたもので、「コバエ」を含むさまざまな害虫を寄せ付けない成分が含まれています。
適切な濃度に薄めて使うことで、植物の成長を助けたり、土壌を改良したりする効果も期待できます。
100円ショップでも取り扱いがありますが、はじめて木酢液を使う場合は、園芸専門店で販売されている、品質のよいものを選ぶのがおすすめです。
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以下の木酢液は、自宅で以前使っていたものですが、大容量で植物にも使いやすいと感じました。
お酢を100倍ほどに薄めて使う方法もある
手軽に試したい場合は、「木酢液」の代わりに、スーパーなどで手に入るお酢を100倍ほどに薄めて使う方法もあります。
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ですが、お酢と木酢液では成分が異なるため、安心して使用したい場合は木酢液の方が無難です。
発生した「コバエ」を退治する4つの方法
どんなに「コバエ」対策をしていても、植物を育てていると、発生してしまうことはあります。
- 園芸用の殺虫剤を使う
- 清潔な土に植え替える
- 鉢ごと水に浸ける(10~15分ほど)
- すぐ近くで食虫植物を育てる


園芸用の殺虫剤を使う
家庭用の殺虫剤は、植物に悪影響を与える可能性があるため、植物には必ず園芸用の殺虫剤を使ってください。
植物用の殺虫剤には、スプレータイプや、土に挿して使う粘着テープタイプなど、さまざまな種類があります。
- スプレータイプ
- 即効性があり、コバエを素早く駆除できる
- 商品によって効果のある害虫が異なるため、コバエが対象になっているものを使用する
- 粘着性のテープのタイプ
- 害虫が好む黄色のテープに、コバエを誘引して捕獲する
- 土に刺して使用するタイプや、高い場所から吊り下げるタイプがある
粘着性のテープは美観上の問題があるため、見た目が気になる場合は、スプレータイプがおすすめです。
基本的に季節を選ばず使用できるのが殺虫剤のメリットですが、暑い季節には薬害が出る可能性も高まります。
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季節や植物の状態に合わせて、使うことが重要です。
以下の殺虫剤は2022年に発売された殺虫剤で、「コバエ」だけでなくハダニやアブラムシなど、園芸で定番の害虫にも効き目があります。
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観葉植物に湧くコバエと、キッチン周りに発生するコバエは種類が違うので、対策グッズを購入する際は注意しましょう。
清潔な土に植え替える
「コバエ」の発生源である土の環境を、根本から変えることができます。
植え替えのベストシーズンは、暖かい春か秋ですが、もし時期が合わないときは、まず土の表面だけを取り替えるだけでも効果的です。
「コバエ」は地表から3〜4cmの深さに卵を産み付けるため、表土を取り替えることで、「コバエ」の卵を駆除できます。
植物を植え替える場合、あたらしく使う土には以下の土がおすすめです。
- 無機質の土
- 「コバエ」が発生しにくい培養土
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表土だけ取り換える場合、土の劣化も気になるため、植え替えの適期になったら、あらためて植え替えた方がよいでしょう。
鉢ごと水に浸ける(10~15分ほど)
「コバエ」の幼虫は、多湿を好みますが、水の中では生きられません。
水耕栽培に適さない植物でも、短時間であれば、悪影響はほとんどありません。
「コバエ」を退治するためには、鉢全体をしっかりと水に浸けることがポイントです。
「コバエ」の卵は土の表面から2〜3cmの深さにあるため、深い位置まで浸けないと効果が薄れてしまいます。
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ただし土が溢れないように、水の高さには注意しましょう。
鉢底から水やりをする「底面給水」については、以下の記事で解説しています
ご興味があれば、参考にしてみてください
すぐ近くで食虫植物を育てる
コバエ対策として、すぐ近くで食虫植物を育ててみるのはどうだろう?
と考えたことがあるかもしれませんが、「コバエ」対策としての食虫植物は、以下の理由から、補助的な役割に留めるのが賢明です。
- 効果は限定的
- 食虫植物が食べられる量には限りがあり、「コバエ」の繁殖力には対抗できない
(十分な効果を期待するには、多くの食虫植物を育てる必要がある)
- 食虫植物が食べられる量には限りがあり、「コバエ」の繁殖力には対抗できない
- 卵には無力
- 食虫植物は成虫を捕食するが、卵や土の中にいる幼虫は食べない
- 二次被害のリスク
- 食虫植物には虫を引き寄せる性質があるため、害虫を呼び寄せてしまう可能性がある
もし試すのであれば、他の対策をしっかり行った上で、コバエを少しでも減らすことや、食虫植物を育てる楽しさのために、補助的な役割として取り入れてみるのがよいでしょう。
まとめ
観葉植物に湧く「コバエ」の正体は、土の中の有機物を好む「クロバネキノコバエ」です。
「コバエ」は驚異的な繁殖力から、いちど発生すると厄介な存在です。
予防策の基本は「コバエが好む環境をつくらない」ことです。
具体的には、
- 土の管理
- 土を乾きやすくするために、水やり頻度や風通しに注意する
- 土の選択
- 有機物を含まない無機質の土や、ハイドロカルチャー、水耕栽培などで育てる
- 肥料の選択
- 有機肥料ではなく、化成肥料を使う
もし「コバエ」が発生してしまった場合は、殺虫剤の使用、清潔な土への植え替え、鉢ごと水に浸けるといった方法で対処できます。
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