マンションの植栽管理を難しくする【6つの理由】商業施設との違いとは?

‟マンション緑化”の現実

大型の商業施設では、季節を問わず、管理が行き届いた植栽が周囲の景色を彩ります。

筆者

枯れた植物が長期間放置されているような光景は、ほとんど見かけないでしょう。

ところがマンションでは、商業施設とはまるで違う光景が広がっていることが少なくありません。
枝葉が伸び放題になっていたり、枯れた植栽が放置されていたりするだけでなく、元々あった植栽そのものがなくなっていることもあります。
マンションには、独自のお金の流れや管理規約などがあるため、どうしても商業施設との違いが生まれやすいのです。

本記事では、マンションの植栽管理を難しくする6つの理由を、商業施設と比較しながら解説していきます

この記事の筆者の肩書き
  • 保有資格
    • マンション管理士
    • 管理業務主任者
    • 宅地建物取引士
  • 経歴:マンション管理会社へ10年以上勤務
筆者

マンションにある緑について疑問をお持ちの方は、‟マンション緑化”の現実を知るきっかけとして、ぜひ本記事を参考にしてください!

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目次

マンションの植栽管理を難しくする【6つの理由】

植栽にかけられる予算が限られている

生活に直結する建物・設備の維持管理が優先される

マンションでは、所有者全員から毎月集めた管理費などを、建物・設備の維持管理に充てています。

多くのマンションでは、建物全般を管理するなかで、まずは電気・ガス・水道といった生活に直結する設備に優先して予算を充てます。

筆者

基本的に緑が枯れていても、ライフラインに大きな影響はないため、後回しにされがちなのが実情です。

限られた予算のなかで、植栽に大きなお金をかけるのは容易ではありません。

費用対効果を感じにくい

商業施設では、美観の維持・向上が集客や顧客満足度につながるため、植栽管理にかける予算の枠も多くなる傾向があります。
一方、マンションで植栽がキレイに保たれていると、たしかに居住環境の向上にはつながるでしょう。
ただしキレイにするための管理コストが、マンションの資産価値に直接反映されることは、なかなか感じにくいものです。

筆者

実際に商業施設では、植物のレンタルが採用されることも多いですが、マンションで植物のレンタルは、費用対効果の点から広く普及していません。

「さらに良くする」より「現状を維持する」ことが優先されやすい

マンションでも、建物・設備の劣化を防ぐための修繕やメンテナンスなど、「現状を維持するための支出」は必要経費として理解されやすいでしょう。
一方で、たとえば今よりも植栽を増やすという「さらに良くする」内容に対しては、費用をかけるだけの明確な理由が求められます。

潤沢な資金を抱えているマンションでも、

Aさん

将来に備えて、支出は最低限に抑えるべき。

と考える方が一定数お住まいのため、お金を使うためのハードルが高くなりやすいのがマンションの実情です。

支出の増加が、大きな負担になる世帯も一定数いる

マンションには、さまざまな生活事情を抱えた方が暮らしています。

老後の年金を主な収入源としている世帯や、日々の生活費に余裕がない世帯にとっては、管理費などの支出が増えることが大きな負担になる場合も……。
そのような世帯に配慮することで、結果的に植栽管理が進まないことになるのです。

共用部分のため、自由に手を加えられない

全員で決めて管理するのがマンションの基本的なルール

一般的にマンションには、建物・設備の維持管理に関するルールを定めた「管理規約」があります。

Aさん

枝葉が伸びすぎているから、剪定しよう。

Bさん

美観上、エントランス付近に緑を取り入れたいから、自宅で増えた植物を置こう。

といった善意の行動であっても、管理規約上、マンションの植栽は全員で所有する「共用部分」であり、自由に手を加えることはできません。

この仕組みは、居住者がそれぞれ好きなように手を加えることで、マンション全体の管理に支障が生じるのを防ぐためのものです。

ちなみに以下の記事では、管理規約のうち「植物の置き場所」に焦点を当てて解説しています

植栽に詳しい居住者がいても、その知識や経験をすぐに活かせない

植栽に詳しい居住者がいたとしても、その知識や経験をすぐに活かせないのもマンションの特徴です。
柔軟に対応できれば円滑に解決する問題も、スムーズに行えないのがマンション管理のもどかしいところかもしれません。

筆者

ただし、適切な管理をするために最低限のルールは必要なので、難しいところですね……。

居住者の植栽への関心に差がある

マンションの居住者全員が、植栽に関心を持っているとは限りません。

Aさん

緑あふれるマンション内の景色が好き。

というひとがいる一方で、植栽にはあまり関心がなく、

Bさん

日中は不在にすることが多いし、問題なく住めれば十分。

と考えるひともいます。
管理費を値上げしてでも植栽を今よりキレイにしたいと考えるひとがいたとしても、関心がないひとが多ければ、その意見が採用されるとは限りません。

この「植栽への関心の差」も、マンションの植栽管理を難しくしています。

関心が高いひとが一定数いても、住民だけで継続的に管理するのは難しい

居住者から有志を募り「●●マンション緑の会」のようなボランティア団体をつくって、その団体が植栽を管理する方法もあるでしょう。
しかし、植栽の管理は剪定や除草など、労力のかかる作業が継続的に発生します。

筆者

たとえ最初のうちは有志が集まったとしても、限られた人数で長期間にわたり、無償で作業を続けるのは決して簡単なことではありません。

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植栽の管理方針を決めるひとと、実際に暮らすひとが違う

マンションでは、管理方針を決めるひととマンションに暮らしているひとが、必ずしも同じではありません。

筆者

管理方針を決めるひとが遠方にお住まいで、何年もマンションを訪れていないケースも、珍しいことではありません。

たとえば、マンションを出入りする居住者であれば、

Aさん

駐車場近くの植栽、少し元気がないな。

といった、日常の変化にも気づくことがあります。
しかし、その気づきが管理方針を決めるひとまで届くまでは時間がかかり、そもそも居住者の声が届かないケースも少なくありません。

「マンションを実際に見て気づくひと」と「決めるひと」が異なる。
この点も、マンションの植栽管理を難しくしている理由のひとつといえるでしょう。

植栽の専門家が常駐しているわけではない

マンションには、植栽の専門家が常駐しているわけではありません。

筆者

長時間、管理員さんが勤務しているマンションもありますが、管理員さんは日常的な管理業務を担う立場であり、植栽の専門家ではありません。

専門家の視点から日常的に植栽の状態をチェックできているわけではないため、変化や問題に、すぐに気づけないことがあります。
植栽の変化にすぐに気づけば解決できたトラブルも、対応が遅れてしまうと、大きなトラブルに発展することも……。

一方、植栽の特に力を入れている商業施設では、植栽の専門家が常駐に近い形で勤務しているケースも珍しくありません。

この違いも、マンションの植栽管理が難しい理由のひとつです。

緑化条例をクリアすることが優先され、管理面の検討が十分にされていない

建設時に緑化条例をクリアすることが優先されるあまり、管理面の検討が十分にされていないことも、マンションの植栽管理を難しくする理由です。

マンションでは、地方自治体が定める「緑化条例」などに基づき、建設時に緑化を取り入れることがあります。

限られた敷地のなかで、必要な緑化面積を効率的に確保するために、管理が難しいとされる「壁面緑化」や「屋上緑化」などが積極的に採用されるケースもあります。
マンションの植栽は、「分譲後も管理組合がうまく管理できるか」という視点ではなく、「植栽をどのように取り入れれば、緑化面積を効率的に確保できるか」という点に重きを置いて検討を進めることも多いです。

筆者

一般的には、設計段階で植栽業者さんに知見を借りながら緑化を検討しますが、現場ではマンションの「販売≧管理」という考え方が優先されることも少なくありません……。

長期的な維持管理まで十分に検討されているマンションがある一方で、建物の設計段階から、きめ細かな部分に検討が行き届いていないマンションも一定数あるのが実情です

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まとめ

「枝葉が通路にまで伸びてきている」、「枯れたまま放置されている」といったマンションの植栽を目にすると、

Aさん

もっとしっかり管理すればよいのに……。

と思ってしまうかもしれません。
しかし、その背景には、一筋縄では片づけられないさまざまな事情があります。
マンションでは、誰かひとりの判断で植栽を改善することができません。
居住者同士ができる限り協力して、長期的に無理なく維持できる方法を考えることが重要です。

「マンションの緑は、なぜ管理が難しいのか」。その答えを知ることが、よりよい植栽管理への第一歩になるでしょう。

マンション園芸の注意点については、以下の記事で解説しています
トラブル回避術もあわせてご紹介しているので、よろしければお読みください

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