ベランダ園芸の注意点
一戸建てにお住まいの方だけでなく、マンションに居住する方も、園芸を楽しむひとが増えています。
ベランダや玄関前などのインテリアにもなる植物ですが、「鉢を置いてよい場所なのか。」という認識が曖昧なまま、マンションで生活しているケースも少なくありません。
基本的に、ベランダに鉢を置けるかどうかはマンションごとにルールが異なります。また、玄関前には物を置くことはできません。
この記事では、マンションでの園芸を楽しむ上で欠かせない「植物の置き場所」に関するルールと注意点を、マンション管理会社に勤めている筆者が詳しく解説します。
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- マンション管理士
- 管理業務主任者
- 宅地建物取引士
筆者実際にマンションで起きた事例を参考にしているため、より実践的な内容になっていると思います。
マンションには『専有部分』と『共用部分』がある
- 専有部分:特定の所有者(居住者)だけが使用できる部分
- 共用部分:所有者全員で共有し、全員が使用できる部分(廊下や階段など)
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端的に言えば、お部屋内が「専有部分」、それ以外の部分が「共用部分」です。
マンションで園芸を楽しめるスペース
屋外のスペース(共用部分)
原則として、共用部分には私物を置けない
禁止されている理由は、私物が置かれていると、災害が発生した際に避難の妨げになる可能性があるため。
このルールに従うと、共用部分には全面的に植物を置くことが制限されることになります。
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ただし例外もあるため、後述します。
外構部分(通路脇など)に、私物の鉢が置かれていることもありますが、同じ理由からルール違反の可能性が高いです。
共用部分でも、専用庭には鉢を置ける
一部のマンションでは、地面に面した住戸に「専用庭」が設けられています。
専用庭を利用できるのは、その居住者のみです。
- 専用使用権(独占して使用できる権利のこと)が設定された共用部分
- 共用部分である専用庭を独占して使用する居住者は、専用使用料を支払うケースが多い
- 専用庭は、その居住者のみが使用できるものの、災害時の避難経路に指定されているケースがほとんど
専用庭はルール上、ベランダとほとんど同じ扱いを受けます。
ただし専用庭の方がスペースが広く、私物を多少置いたとしても有効な避難経路を確保できるため、一部のスペースを除き、鉢を置けるのが一般的です。
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園芸好きにとっては、ありがたい「専用庭」ですが、大多数の住戸には設けられていません。
以上のように、マンションの屋外(共用部分)で園芸を楽しめるスペースはあまり多くありません。
屋内のスペース(専有部分)
共同住宅であっても、お部屋内はそれぞれの所有者(居住者)が自由に扱えるスペース。もちろん、植物を育てることも可能です。
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ただし、後述する近隣住戸への配慮は必要です。
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最近は植物育成用のLEDライトが進化し、室内でも強い光を好む品種も育てやすくなりました
植物の室内育成については、以下の記事で必要なガーデニング用品などを解説しています
ご興味があれば、参考にしてみてください
マンションで暮らす上で注意すべき『ルール』&『マナー』
マンションは一戸建てと比べて、隣接住戸との距離が近く、上下に他の居住者が住んでいるケースが多いです。
近隣住戸とのトラブルを避け、良好な住環境を維持するために、さまざまなルールが定められています。
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たとえば、園芸の分野に関連するルールは、以下のようなものがあります。
- 避難経路の確保:災害時でもスムーズに避難できるように、物品の設置や私物の放置が禁止されている
- 危険行為の禁止:高所から物品が落下し、下の通行人に危険を及ぼさないように、手すりにプランターを設置するなどの行為は制限されている
- 迷惑行為の禁止:近隣の居住者に迷惑をかける行為(枯れ葉の侵入や、水やりの水がかかるなど)は、制限されている
避難経路は、法律(消防法)で決まっているため、マンションごとに大きな違いはありません。
危険行為と迷惑行為は「どこまでが許容範囲で、どこからが迷惑行為なのか。」といった考え方は違うので、それぞれのマンションで規定しているルールは異なります。
マンションでの園芸にまつわる「迷惑行為」については、以下の記事で詳しく解説しています
ご興味があれば、あわせてお読みください


共同住宅で守るべき『ルール』はあらかじめ決まっている?
法律にあいまいな面があるように、共同住宅におけるルールも、あらかじめ決まっていることもあれば、明確に規定されていないこともあります。
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数は多くないものの、ルールが不明瞭な点でマンションの居住者同士がもめて、最終的に裁判で争うこともあります。
分譲マンションの場合
法律に抵触したり、所有者(居住者)同士のトラブルに発展したりしないために、あらかじめ「管理規約」というルールブックを制定しているのが、分譲マンションの特徴です。
※管理規約以外に「細則」というルールもありますが、複雑になるため、本記事では「管理規約」に統一します。
管理規約はマンションごとに定められており、時代やニーズに応じて変更できるため、そのマンション特有のルールが定められているケースもめずらしくありません。
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管理規約で規定されたルールのうち、園芸にまつわるものとしては、以下のような例があります。
- 容易に移動できない植木鉢を、ベランダなどの共用部分に置いてはならない
- 地面に直接、砂利や用土を敷いてはならない
- 手すりに、落下の危険性があるもの(プランターなど)を設置してはならない
賃貸アパートの場合
数は少ないものの、細かいルールがあるとしたら、貸主と借主で締結する「賃貸借契約書」や、宅地建物取引士が説明する「重要事項説明書」で規定されています。
管理規約や賃貸借契約書に記載がなくても、法律で定められているケースはある
管理規約や賃貸借契約書などに記載がなくても、法律でルールが定められているケースはめずらしくありません。
管理規約と法律のそれぞれで、相反する規定を設けている場合は、法律が優先されるのが一般的です。
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不明点があれば、専門家である管理会社に確認することで、余計なトラブルを減らせることもあります。


管理規約のパターン事例集
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ここでは、実際に分譲マンションで定められている事例を深掘りしていきます。
パターンA(共用部分での園芸を禁止している)
禁止されている場合は、共用部分で園芸を楽しめない
このようなルールが定められている以上、このマンションの共用部分では園芸を楽しむことはできません。
園芸禁止は、特に「超高層マンション」で見られる規定
特に高さが60mを超える「超高層マンション」で、園芸を禁止にしている管理規約を目にします。
高い建物では風の影響が大きくなるため、ベランダのプランターや植木鉢が倒れたり、手すりの外へ落下したりする危険性が高まります。
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安全性を最優先に考えるなら、やむを得ない規定ですが、園芸が好きな方がこのようなマンションに住むと、植物を存分に楽しめないかもしれません。
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パターンB(置いてはいけない場所を記載している)
ベランダでの園芸を全面的には禁止しないものの、プランターや植木鉢を置いてはいけない場所を、管理規約に記載しているマンションもあります。
これは、ベランダが火災などの非常時の避難経路という役割をもっているためです。
- 避難ハッチ(避難はしご)の周辺
- 隣接住戸のベランダの間にある隔て板(隔壁板)の周辺
避難ハッチ(避難はしご)の周辺
避難ハッチ(避難はしご)は、普段は格納されているはしごを下りることで、災害時に直下階へ避難することができる設備です。
隣接住戸のベランダの間にある隔て板(隔壁板)の周辺
隣接住戸のベランダの間にある「隔て板(隔壁板)」は、足で蹴ることで、カンタンに突き破ることができます。
災害時には隔て板を突き破ることで、隣接住戸へ避難することができます。
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あえて壊しやすいようにつくられているため、台風の強風などで破損してしまうケースもめずらしくありません。
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いずれのケースも、「避難ハッチ(または隔て板)から〇〇cm以内には物を置いてはいけない」というように、置けない箇所を具体的に規定しているケースが目立ちます。
避難ハッチなどの周辺に物を置いていると、消防設備点検で指摘されることも…。
避難ハッチなどの周辺に「物を置いてはいけない場所」のルールは、消防法に基づく消防設備点検でのチェック項目のひとつ。
点検で指摘を受け、是正を求められることのないように、日ごろから定められたルールを守りましょう。
パターンC(特に記載されていない)
分譲マンションの管理規約では、園芸や植木鉢に関する具体的な記載がないケースも見られます。
なぜなら、マンションの共用部分には、管理規約とは別に消防法などの法律が適用されるため。
管理規約に明記されていなくても、避難を妨げる場所に植木鉢を置くことは、当然ながら禁止事項となります。
まとめ
この記事では、マンションにおける「植物の置き場所」について、ご紹介しました。
マンションは一戸建てと異なり、個々人の判断だけでは、建物全体のことを決めることができません。
よい意味では「規律性がある」と言えますが、悪くいえば「融通が利かない」という特徴とも言えるでしょう。
園芸好きなら、一戸建ての方が気兼ねなく楽しめますが、マンションに住んでいても、ルールの範囲内で植物を楽しむことはできます。
以上です!
以下の記事では、マンションの「共用部分」の植栽維持管理のむずかしさについて、解説しています
マンションの共用部分の植物は、商業施設の植物のように元気に育ちにくいことには、理由があります。
ご興味があれば、あわせてお読みください


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