トラブルを未然に防ぐ
園芸が好きなひとは、庭付きの戸建てにお住まいになっているひとも多いですが、マンションでも植木鉢で植物を育てているご家庭も一定数あります!
植物を育てようと思ったときに、まず思い浮かべるのが植物の置き場所です。
室内を放し飼いにしているペットであれば、自分が気に入った場所に自らの意思で移動してくれますが、基本的に植物は自ら移動することはできません。
健康的に育てるのであれば日当たりのよい室内かまたは屋外で育てることになりますが、「マンション」という環境で屋外に植木鉢を置けるとしたら、バルコニーか玄関前などの一部の敷地に限られてきます。
分譲マンションには、個々人がそれぞれ所有している居室である「専有部分」と、廊下や階段などのマンションの所有者全員で所有している「共用部分」がありますが、ベランダや玄関前のスペースは「共用部分」にあたります。
共用部分には基本的に私物を置くことはできませんが、その原理でいうと植物も置くことはできないのでしょうか!?
植物好きにはベランダや玄関前のスペースに植木鉢を置けるかどうかは重要なポイントですが、このあたりの認識があいまいなままマンションに住んでいる方も、意外と多いように思います。
今回は、植物好きな方が共同住宅に住むにあたっての注意点について、解説していきます!
- 保有資格「マンション管理士」「管理業務主任者」「宅地建物取引士」
- マンション管理会社へ勤務
マンションで園芸を楽しむスペース
下階に「専用庭」という個人が使用できるお庭が付いているマンションもありますが、基本的に「専用庭」を利用できるのは一部の居住者に限られるので、多くのマンションの居住者は園芸を屋外で楽しむとしたら、ベランダか玄関前などのスペースで楽しむことになります。
室内でも植物を楽しむことはできますが、室内の環境ではどうしてもスペースに限りがあるもの。
天井などから植物を吊り下げる“ハンギングプランツ”などでスペースの有効活用を図ることもできますが、窓ガラスやレースのカーテンを通すだけでも光は遮られてしまうので、室内でも窓から近い場所など明るい場所で育てることが望まれます。
どうしても、室内の日があまり当たらない場所で植物を飾りたいのであれば、植物育成用のLEDライトを準備し植物が光合成できる環境を提供してあげる必要がでてくるでしょう。
多くの植物を育てたいときに、室内の環境だけではなく屋外の環境も組み合わせることができれば、育てられる量が爆上がりすることにもつながりますが、マンションにはお庭が付いていない仕様が一般的です。
お庭が付いていればそれに越したことはないですが、お庭が付いていないときに重要な育成場所となるのが、ベランダや玄関前などのスペースとなります。
結論から述べると、バルコニーに植物を置くことができるかはマンションごとに異なり、一般的に玄関前には植物を置くことができません。
ベランダとバルコニーの違い
日常生活で使われるレベルではそこまで厳密に区別されていませんが、「ベランダ」と「バルコニー」には違いがあるのを知っていますか!?
明確な定義はないもののふたつの違いは“屋根の有無”でとされ、「ベランダ」には屋根があり、「バルコニー」には屋根がないといった違いがあります。
土地との段差を埋めるために、砂利や土を盛った敷地もあり、それらは「テラス」などと呼ばれることもあります。
さらに「バルコニー」には「ルーフバルコニー」といって、下の階の屋根(ルーフ)の上につくられる、面積が広めなバルコニーもありますが、最近ではルーフバルコニーのことを「スカイバルコニー」と呼ばれることも。
ベランダで園芸を楽しむ特徴
ベランダは屋根がある分、台風など強い風をともなう雨が降らない限り、植物に雨があたりません。
水やりの管理でいえば、意図しない水があたらないベランダの方が管理がしやすいですが、水やりの回数が増える特徴はあります。
また、太陽がもっとも長く日本の土地に当たる夏至(げし)前後は、太陽が空高くあがることになるので、屋根があると置いている植物に直射日光が当たる時間が限られるのも特徴のひとつ。
真夏の季節には、強い直射日光で植物の葉が焼けてしまう“葉焼け”を避けられることになるので、うれしいポイントともいえますが、夏の季節にグングン成長する植物にとっては適切な光の光量を確保できないことにも。
バルコニーで園芸を楽しむ特徴
屋根がないバルコニーでは、雨が降れば雨水が直接植物にあたるため、特に梅雨どきなどには多湿を苦手とする植物に、雨水があたらないようにビニールを使用するなどの工夫が必要となります。
また、ベランダとは異なり季節を問わず太陽の光を確保しやすい特徴があるので、一年中直射日光を好む植物には置き場所として好ましいといえるでしょう。
強い光を必要としない植物を育てる場合には、園芸用の遮光ネットなどを使用して、強すぎる光が植物に直接あたらないように調整する必要があります
「ベランダ」にも「バルコニー」にもメリットもあればデメリットもあるものの、育てている側の工夫次第では戸建てにあるお庭のように、植物を育てる環境として成り立ちます。
マンションでは「バルコニー」よりも「ベランダ」の方が多く、ルールに関してはどちらの環境でも大差がないことが一般的なので、本記事では「ベランダ」で統一します。
ルールはあらかじめ決まっている?
分譲マンションの場合、住民同士のトラブルを防止したり法律を違反しないようにする目的で、あらかじめ「管理規約」や「使用細則」といったルールブックが、マンションごとに定められているケースが一般的です。
このルールブックでは、園芸のルール以外にも様々なルールが定められていますが、植物に関するルールでは「容易に移動ができない植木鉢を、ベランダなどに置いてはならない。」といったルールや「地面に直接砂利や用土を敷いてはならない。」といったルールが定められていることもあります。
また、賃貸アパートなどでは貸主と借主との間で締結する「賃貸借契約書」や、賃貸借契約を締結する前に説明のある「重要事項説明書」に園芸の規制が記載されていることもありますが、分譲マンションと同じように、書面上どこにも園芸に関するルールの記載がないケースがあります。
分譲のマンションにおいても賃貸のアパートなどにおいても、不明点があれば管理会社などに問い合わせて確認をすることが望まれまるでしょう。
注意すべきルールなど
ここでは、一般的にマンションに住むにあたって注意すべきルールやマナー、注意点などについて記していきます。
主に、マンションで園芸を行うにあたり、注意する点は限られています。
- 避難経路の確保
- マンションには共同住宅であるがゆえ、有事の際に居住者がスムーズに避難できるように、物品を置いてはならない場所が決められています。
- 危険行為の禁止
- モノが落下して通行人などに危険がおよばないように、特定の危険行為が制限されています。
- 迷惑行為の禁止
- 近隣の住民などに迷惑がかからないように、特定の迷惑行為が制限されています。
「避難経路」の面では法律で決まっている内容なので、マンションごとの違いはなく、「危険行為」と「迷惑行為」については、個々のマンションで考え方が変わってくるので、マンションごとにルールが変わってきます。
具体的な例を見ながら植物を取りまくルールについて、もうすこし深堀りしていきます。
管理規約のパターン事例
マンションごとに定められているルールは違うので、いくつか代表的な事例を紹介していきます。
パターンA:全面禁止
まずは、ベランダでの園芸を、前面禁止としているマンションです。
数としてはそこまで多くはありませんが、マンションの中にはベランダでの園芸を全面禁止としていることもあります。
一般的に、共同住宅のなかでも31mを超える建物を「高層マンション」といい、60mを超える建物を「超高層マンション」とされていますが、高層マンションなどの高いマンションでは、ほかのマンションよりも強い風が吹きやすく、強い風によってベランダに置かれているモノが飛ばされやすいという特徴があります。
また、万が一でもモノが手すりの外へと落下してしまうと、高い建物がゆえに、大事故に発展する可能性が高いの点も特徴としてあげられるでしょう。
そのため、マンションによってはベランダでプランターや植木鉢を含めて、私物を置くことを全面禁止としているマンションもあるのです。
パターンB:置き場所による
ベランダでの園芸を全面禁止とはせずに、プランターや植木鉢を置いてもいい場所(範囲)を指定しているマンションもあります。
たとえば、「●●より●cmの範囲内で置くことができる」などの規定ですが、管理規約に定めがある以上は、やはりルールを守っていく必要があります。
マンションによっては「避難はしご」といって、廊下で火災などがあった際に、ベランダから下の階にはしごを使用しておりていけるようなつくりになっていることもあります。
避難はしごの下に植木鉢を含めて物品が置かれていると、有事の際に避難に支障がでる状況になってしまうので、このようなルールを定めているのです。
また、避難はしごの近くだけではなく、他にも避難の妨害となってしまう物品を置くことができない場所が存在します。
それは、隣接住戸の間の場所。
一般的にマンションのベランダとベランダの間は、「隔壁板(かくへきばん)」という板で区切られています。
この隔壁板は簡単に壊すことができ、有事の際にこの隔壁板を突き破って隣接住戸に行き、隣接住戸から逃げることもできる仕様となっているのです。
しかしながら、隔壁板のすぐ近くに割と大きな植木鉢が置かれていたりすると、避難に支障がでることになるので、ルールで隔壁板の付近にも物品を置くことが禁止となっています。
ベランダに物品が置かれていないかどうかも、マンションで行われる消防設備点検の際などにチェックされるので、ルールは守っていく必要があるでしょう。
パターンC:記載なし
分譲マンションではこのケースがもっとも多いですが、管理規約で、園芸や植木鉢についての記載がないケースもあります。
この場合でも、避難の妨げになる箇所を植木鉢を置くことが禁止されていることに変わりはありません。
たとえば、玄関前などにも植木鉢があると避難の妨げになる可能性はあるでしょう。
そういった箇所に、物品を置くことは管理規約で定めがなくても、法律が適用されるので、マンションごとのルールはあまり関係なく、当然に禁止とされるのです。
マンションで園芸を行うことで発生する「迷惑行為」は、トラブル事例として別の記事でご紹介をしていますので、ご興味があればお読みください。
まとめ
戸建てとは違い、個々人の判断だけで建物全体のことを決められず、マンション全体で決まっているルールを守っていく必要があるマンション。
良い意味では「規律性がある」ともいえますが、悪く言えば「自由が利かない」といった特徴といえるでしょう。
ただし、マンションの「セキュリティ性」や「立地条件」などは戸建てにはなかなか無いメリットなので、どちらがいいかはひとの価値観によりきり。
植物が好きなら、戸建ての方が気兼ねなく楽しむことができるのは間違いないですが、ルールを守ってさえいればマンションに住んでいてもボタニカルライフ充分に楽しむことはできます!
マンションごとにルールも違えば、住民の園芸に関する考え方も異なるので、植物が好きなひとは園芸について一定の理解があるマンションに住むことで、ストレスが少なく植物を楽しめることにつながるでしょう。
以上!
本記事では、マンションの共用部分で植物を育てることができるか。という点をご紹介しました。
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