市販の培養土もご紹介
成長が緩やかなアガベですが、適切な用土を選ぶことで、そのポテンシャルを最大限に引き出せます。
逆に用土の選択を誤ると、根の活動が鈍り、健康的な成長が見込めません。
アガベの成長に特に重要な「排水性」と「通気性」以外にも、こだわりたいポイントがあるため、参考にしてみてください
アガベと同じく、乾燥気味な環境を好むサボテンや、塊根植物の育成にも役立つ情報となっています。
アガベが育つ自生地(メキシコ)の環境
アガベは、自生地のメキシコで生き抜くために、進化を遂げた植物です。
メキシコの気温や湿度、土壌に含まれる栄養分などを再現することで、アガベが暮らしやすい環境になります。
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メキシコの気温
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メキシコは、とても暑そう…!
と思っていましたが、実はメキシコはものすごく暑いわけではありません。
- 夏の最高気温は、日本と同じくらい
- 日本の冬のように、寒い季節は訪れない
- 昼と夜の気温差が大きい
メキシコの降水量&湿度
メキシコは雨が少なく、年間降水量は日本の3分の2程度です。
湿度も低く、特に乾季はカラッとした空気が流れています。
メキシコの土壌酸度(pH)
植物には酸性を示す土壌(pH7未満)で自生する品種もいれば、アルカリ性の土壌(pH7超)で暮らす品種もいます。
メキシコの土壌はアルカリ性を示しますが、メキシコは、お酢のような強い酸性雨が降る地域です。
アルカリ性の土と酸性雨が混ざるため、アガベが吸い上げる水分は弱酸性(pH6.0~6.5)に中和されます。
アルカリ性を示す土壌+酸性雨=植物(アガベ)が吸い上げる水分は弱酸性
アガベの休眠期である乾季は、酸性雨の影響を受けづらいため、雨季と比べると土壌酸度は強いアルカリ性を示します。
メキシコの土壌(栄養分)
雨にも栄養分が含まれているため多少の栄養はありますが、ジャングルのような場所と比べると、土壌の栄養源になるものは少ないです。
アガベや塊根植物の肥料については、以下の記事で詳しくご紹介しているため、ご興味があれば参考にしてみてください
メキシコの環境のまとめ
以上の点をふまえると、メキシコと日本の違いは以下のとおりです。
- 厳しい寒さや、高温多湿の季節は訪れない
- 降水量が少なく、湿度が低い
- 土壌はアルカリ性を示すが、強い酸性雨が降るため、自生する植物は弱酸性の水分を吸い上げている
- 土壌に含まれる栄養分は少ない
アガベをはじめ多肉植物の自生地の環境や、地域ごとの望ましい植物の育て方は、以下の記事でご紹介しています
メキシコの特徴についても、より詳細に解説しているため、ご興味があればあわせてお読みください


アガベが元気よく育つ用土
優先して整えたい用土の条件
排水性&通気性がよい
アガベは、どのような特徴をもつ用土を好むのでしょうか!?
- 排水性
- 用土内をどれぐらいスムーズに、水が流れていくのかを示すもの
- ‟水はけ”とも言われる
- 通気性
- 用土内を、空気がどれだけ循環しやすいかを示すもの
アガベは、乾燥気味に育てることで、健康的な成長を見せる植物です
排水性と通気性は、どちらも用土の乾きやすさに大きな影響を与えます。


可能なかぎり整えたい用土の条件
排水性や通気性ほど重要ではありませんが、以下のように、可能なかぎり整えたい条件もあります。
- 硬い品質で、粒が崩れにくい
- 粒の大きさが均一
- 弱酸性(pH6.0~6.5)
それぞれの条件を、深堀りしていきます
硬い品質で、粒が崩れにくい
粒が崩れると、排水性や通気性に悪影響を与える
用土の粒が崩れると、微塵(みじん)と呼ばれる泥のような粒子になり、排水性や通気性に悪影響を与えます。
鉢植えの用土は使用とともに少しずつ劣化するため、長期間の使用には向きません。
もっとも硬いのは焼成タイプ
園芸用土の定番である「赤玉土」と「鹿沼土」は、排水性や通気性に優れていますが、粒が崩れやすいです。
通常のものよりも、粒が崩れにくい赤玉土や鹿沼土も市販されています。
- 焼成(しょうせい)
- 赤玉土を高温で焼いている
- もっとも硬く、崩れにくい
- 硬質(こうしつ)
- 通常の赤玉土よりも硬い
- 焼成の赤玉土よりは崩れやすい
- 通常の赤玉土
- 焼成や硬質のものと比べると、崩れやすい
- 流通量はもっとも多く、安価
※焼成と硬質は、一緒の意味で使用されることもあります。
赤玉土は、二本線と三本線に分類される
園芸用土のメーカーが独自に評価しているものですが、高品質の赤玉土を入手したいときは、参考にできる指標です
- 二本線
- 硬い用土を選別したもの
- 三本線と比べると、硬くない
- 三本線
- 二本線の用土よりもさらに硬く、粒の大きさが揃っている(ほとんどが焼成)
- 高価な傾向がある
二本線と三本線は、パッケージに書かれている横線の数で見分けられます。
横に二本の線が入っていれば“二本線”、横に三本の線が入っていれば“三本線”と呼ばれる、高品質な用土です。
アガベは短期間でも植え替えが必要になる
アガベは根を旺盛に成長させるため、株の調子がよければ、半年ほどで鉢内が根で溢れてしまうことがあります。
そのためアガベを植木鉢で元気に育てる場合、定期的(1~2年ごと)に植え替え、鉢を大きくしたり根を整理したりするのが望ましいです。
二本線の赤玉土でも十分硬く、1~2年で粒が大きく崩れることはないため、アガベの育成には二本線のものを使用すれば問題ありません。
以下の園芸用土は、二本線の硬質赤玉土と硬質鹿沼土です。
特に硬質鹿沼土は、取り扱っていない園芸店が多いため、必要な場合はインターネットでの購入を検討してみてください。
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アガベの成長はうれしいけど、育てている株数が多いと、植え替えシーズンは大変です…。
粒の大きさが均一
赤玉土や鹿沼土、ひゅうが土は粒の大きさで分類されている
赤玉土や鹿沼土、ひゅうが土は粒の大きさごとに分類された状態で、販売されています。
粒が大きい順に用土を並べると、以下のとおりになります。
- 大粒(おおつぶ)
- 中粒(ちゅうつぶ)
- 小粒(こつぶ)
- 細粒(さいりゅう)
小粒と細粒のあいだの用土として、「極小粒」(ごくこつぶ)が販売されていることもあります。
複数の用土を配合する場合、大きさを揃える
- 赤玉土(小粒)+鹿沼土(小粒)+ひゅうが土(小粒)
- 赤玉土(大粒)+鹿沼土(中粒)+ひゅうが土(小粒)
たとえば、中粒同士の赤玉土と鹿沼土を配合した場合、用土のあいだに適度なすき間ができるため、排水性や通気性が保たれます。
ところが、そこに小粒のひゅうが土を配合すると、赤玉土と鹿沼土のあいだに、小粒のひゅうが土が入り込んでしまいます。
結果的に、もともとのすき間がなくなるため、排水性や通気性が悪くなるのです。
粒が大きいほど、排水性や通気性が向上する
粒が大きいほど、用土同士のすき間が広くなり、排水性や通気性が向上します。
ただし株が小さなうちに大粒の用土に植えると、用土同士のすき間が大きすぎることで、元気に成長できません。
株の大きさにあわせて粒の大きさを決める
- 大株は、必然的に大きな鉢に植えることになる
- 大きい鉢に入れる用土は、量が増えるため、鉢内に空気が入り込みにくくなる
- 粒を大きくすることで、鉢内のすき間を確保し、空気が入り込みやすくする
迷ったら小粒の用土で揃える
粒の大きさは、どうやって選べばよいの?
と感じる場合は、まずは小粒の用土で揃えるのがおすすめです
大株は丈夫なため、粒の大きさによって、成長が左右されることが少ないです。
弱酸性(pH6.0~6.5)
「アガベが育つ自生地(メキシコ)の環境」で紹介したように、メキシコの土壌はアルカリ性を示します。
以前までは、メキシコに自生するサボテンも、
アルカリ性の用土に植えた方が、よく育つだろう。
と考えられてきました。
しかし最近では、アガベはアルカリ性ではなく、弱酸性の用土の方がよく育つことが分かってきています。
アガベとの相性が悪い用土
相性が悪い用土に植えると、枯れるリスクが高まる
アガベは降水量が少なく、栄養分が微量という過酷な環境で暮らしており、丈夫な植物です。
相性が悪いのは、排水性や通気性が悪い用土
アガベとの相性が悪いのは、排水性や通気性が悪い用土です。
排水性や通気性が悪いと、用土が乾きにくくなるため、水切れのリスクは下がります。
ただしアガベは水切れには強く、逆に多湿の環境が苦手なため、乾きにくい用土との相性が悪いです。
市販の「多肉植物・サボテン用の培養土」にも注意が必要
アガベを育てられるさまざまな培養土が、市販されています。
自分で配合した方がコスパよく楽しめますが、市販の培養土にもメリットはあります。
- 培養土を保管するスペースが少なく済む
- 配合する手間がかからない
長いあいだ園芸を趣味にしている方でも、市販の培養土を愛用している方は少なくありません。
アガベは「多肉植物用(サボテン用)の培養土」で育てるのが一般的
アガベは多肉植物の仲間で、乾燥気味の環境が好きな点では、サボテンと性質が似ています。
保水性がよすぎる「多肉植物用(サボテン用)の培養土」も販売されている
「多肉植物用(サボテン用)の培養土」は、排水性や通気性に優れているものが多いです。
ただし、保水性(水持ち)がよすぎて、乾きづらい培養土も販売されています。
「保水性」ではなく、「排水性」や「通気性」を特徴として打ち出している培養土がおすすめです。
水が乾きすぎるシーズンは、水やりの回数を増やす
アガベも、特に子株のうちは、保水性がよい用土に植えることで元気に育ちます。
逆に、ひゅうが土や軽石のように排水性や通気性を特に重視しすぎた用土では、かえって成長が進まないでしょう。
土が乾きすぎるシーズンは、必要以上に保水性を高めるのではなく、水やりの回数を増やした方が、失敗するリスクを下げられます。
市販のおすすめ培養土
市販の培養土の中では、以下の培養土がおすすめです
2025年にプロトリーフさんから発売され、硬質タイプで崩れにくく、排水性や通気性に優れています
配合土&配合割合
望ましい用土の配合割合は育成環境ごとに異なる
同じ育成環境はなかなか存在しないため、望ましい用土の配合割合は育成環境ごとに異なります。
同じ植物を生産している農家さん同士でも、まったく同じ培養土を使用しているひとは、ほとんどいません。
自宅で使用している配合土&配合割合
自宅で使用しているオリジナル培養土は、以下の割合で配合しています。
用土名 | 配合割合 |
---|---|
赤玉土(硬質) | 3.5 |
ひゅうが土 | 3.5 |
鹿沼土(硬質) | 2 |
くん炭 | 0.5 |
パーライト | 0.5 |
赤玉土(硬質)
赤玉土は排水性や通気性に優れ、ある程度の保水性も備えているため、多くのアガベ愛好家がベースの用土として使用しています。
以前、赤玉土のみでアガベを育成したところ、成長速度が遅かったことを除けば、問題なく成長しました
硬質ではない普通の赤玉土を使用すると、短期間でも崩れてしまいます。
自宅では、2倍ほどの金額がかかりますが、硬質タイプを使用しています。
ひゅうが土
ひゅうが土は排水性や通気性に優れており、粒が崩れにくいため、再利用しやすい点も特徴的です。
園芸用土のリサイクルについては、以下の記事で詳しくご紹介しています
特に多肉植物の培養土は再利用しやすいため、ぜひ、参考にしてみてください
鹿沼土(硬質)
鹿沼土は、排水性や通気性に優れ、赤玉土ほどではありませんが保水性もあります。
赤玉土との最大の違いは酸度で、鹿沼土はpH4.0~5.0の強い酸性を示します。
自宅で使用している鹿沼土は、赤玉土と同じく硬質タイプです。
くん炭
くん炭のpHは8.0~10.0でアルカリ性を示すため、酸性に偏りがちな園芸用土を中和する効果があります。
排水性や通気性に優れ、殺菌効果もあるため、病害虫への対策にもなります。
自宅では木炭を使用していますが、水やりの際に鉢底から流れ出ていきやすく、ふるいにかけると落ちてしまい、リサイクルするのがむずかしいです。
排水性や通気性を高める目的で使用する場合は、くん炭ではなく、再利用しやすいひゅうが土がおすすめです。
パーライト
- 黒曜石
- 「排水性」を向上、または改善させる役割
- 真珠岩
- 「保水性」を向上、または改善させる役割
アガベには排水性を高める目的で使用するため、黒曜石のパーライトを使用します。
アガベに使用されることが多い園芸用土
購入したアガベの用土をチェックすると、以下の用土が使われていることが多いため、あわせてご紹介します
- バーミキュライト
- ゴールデン培養土
- バーク堆肥
バーミキュライト
通気性や保水性、保肥力(肥料を蓄える能力)を有し、軽い特徴があります。
たねまき用の土としても使用されますが、金額が安いものだと、粒がすぐに崩れてしまう傾向があります。
ゴールデン培養土
さまざまな用土を配合することなく、そのまま植物を育てられる培養土です。
保水性や保肥力を高めるために用いられ、少量ですが元肥としても活用できます。
- 観葉植物用
- 花&野菜用
- 多肉植物用
このうち、おもにアガベの配合土として使われるのは、観葉植物用か花&野菜用のゴールデン培養土です。
(多肉植物用は、アガベをそのまま育てられるため、配合土に使用されることは少ないです。)
バーク堆肥
バーク堆肥は保水性や保肥力を高められ、あわせて有機物を供給できます。
なるべくお金をかけずに用土の品質を高める方法
園芸用のふるいにかけて、微塵を取り除く
アガベを元気に育てるためには、微塵が少ない用土を使用するのが望ましいです。
硬質タイプを使用することで微塵の量を減らせますが、赤玉土や鹿沼土を使用していると、少なからず発生するのが微塵です。
用土を鉢に入れる「土入れ」にも、微塵を取り除ける機能が付いたものが市販されています。
土入れについては、以下の記事でご紹介しているため、ご興味があればお読みください。
定期的に植え替える
定期的にあたらしい用土に取り換えることで、アガベを元気に育てられる環境を維持できます。
- 硬質タイプの用土を使用している場合
- 2~3年ごと
- 硬質タイプの用土を使用していない場合
- 半年~1年ごと
植え替え頻度は、使用している鉢の大きさや、株の状態によっても大きく変わります。
アガベが成長をつづけている状態では、植え替える必要がありませんが、固形肥料は、効き目が長く持続するタイプでも2年ほどで効果が切れてしまいます。
固形肥料はあらかじめ用土に配合しない
多くの株数を育てたり、育てているアガベが大きく成長すると、必然的に園芸用土の消費スピードが上がります。
あらかじめ用土の中に入れておくことで効果を発揮する肥料は、以下のように使用することで、コストを抑えられます。
- 一定量の用土を鉢に入れる
- 固形肥料を入れる
- アガベの株元を鉢にセットする
- 用土を足していく
アガベの固形肥料として定番の「マグァンプ」をはじめ、固形肥料は、根の近くにあることではじめて効果を発揮するタイプが多いです。
土を配合する段階で肥料を入れると、植物が吸い上げられない場所にも肥料が蒔かれたり、鉢底から抜けていったりと、肥料の無駄遣いにもつながります。
肥料が少なすぎるとアガベの葉色が悪くなるなど、成長に支障をきたすため、少量でも肥料を与えた方がよいです。
鹿沼土は、酸性を調整する
鹿沼土は、酸性が強い用土です。
アガベは、酸性が強すぎると自生地の環境とかけ離れるため、元気な成長を見せにくくなります。
まとめ
特に「排水性」と「通気性」を重視し、硬く粒が崩れにくい用土を選ぶことで、アガベは健康的に育ちます。
市販の培養土を使う場合は、保水性が高すぎない「多肉植物・サボテン用」を選びましょう。
当記事でご紹介した配合例や、微塵の除去、適切な植え替え頻度を守ることで、大切なアガベのポテンシャルを最大限に引き出せます。
成長速度が遅いアガベは、長く育てていると愛着が増し、どんどん“沼”にハマっていきます
以下の記事で、アガベの魅力についてご紹介しているため、よろしければあわせてお読みください


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