近隣への配慮が重要
電車の最寄り駅から近いことの多い立地やセキュリティ性、さらに集会室やゲストルームなどがマンション内にあったりと、メリットも大きいマンション!
いまでは“東京都内のタワーマンションは平均購入価格が億越え”になるなど、首都圏を中心に人気が集まっているマンションですが、近隣トラブルが起きやすいことや、一部のタワーマンションでは、最上階付近の居住者と最下階付近の居住者の間における派閥など、戸建てではあまり生じることのない問題が生じやすいのも事実です。
そんなマンションですが、本記事では特に「植物」や「ガーデニング」に焦点をあてて、植物を取りまくトラブル事例とその解決方法のご紹介をします!
- 保有資格「マンション管理士」「管理業務主任者」「宅地建物取引取引士」
- マンション管理会社へ勤務
マンションの特徴
マンションと戸建てが異なる点に、ひとつの建物のなかに、さまざまな考えをもっているひとたちが住んでいることが挙げられます。
マンションには日本国籍のひとや外国国籍のひとが住んでいるため、育ってきた文化が異なれば考え方も異なる可能性が高まります。
さらに積極的なひとや消極的なひと、個々人の性格もひとそれぞれなので、働くひとたちの目的がある程度同じである学校や企業よりも、いろいろな考えがひとつに集結している団体が「マンション」となります。
戸建てであれば、家族や友人など考えは多少違うひと同士が住んでいることはあっても、考えが真逆なひと同士が住むケースは少ないでしょう。
一方のマンションでは、同じ建物内であっても隣や上下にはどのような方が住んでいるのか、性格どころか顔や名前すら知らないひとも多いと思います。
そんな考えがまったく違うひとたちが住む「マンション」という団体の管理を良好に維持していくためには、建物内における「ルール」を前もって決めておき、しっかりと決められている「ルール」を住民が守っていくことで、マンション管理が成り立っていきます。
管理規約とは
マンションごとに、あらかじめ決めているルールブックのことを、「管理規約」とよんでいます。
管理規約ではさまざまなことが定められていて、たとえばマンションの所有者が毎月支払う“管理費”や“修繕積立金”や駐車場や駐輪場の使用料、さらに“マンションを取りまく植物に関する取り決め”も、この管理規約で定められています。
(正確には「使用細則」というモノに定められているケースが多いですが、話がややこしくなるので、ここでは「管理規約」に統一します。)
マンションに住む以上、管理規約に定められているルールは必ず守っていく義務があり、ルールが実情や時代にあっていない場合には、必要に応じて「ルールを改定する」しかありませんが、ルールを変えるためには“最高意思決定機関”とされる「総会(そうかい)」に管理規約を改定する議案を諮り、ルールを変更する手続きが必要となります。
ルールを改定していくのは結構な手間がかかるので、決して低いハードルではありません。
すこし難しい話となってきているかもしれませんが、続けさせていただきます。
「植物」に関連するルール
マンションであっても、個人が単独名義または配偶者などと共有名義で所有権をもっている、お部屋のなか(専有部分)は、植物に関する取り決めはありません。
室内で植物を育てる場合には、育てている植物が大きく成長し過ぎて天井をぶち抜いてしまうなどの危険性は低く、基本的には、個々人の自由ということになります。
ここでは、主にマンションの所有者全員で所有している共用部分に焦点をあてていきます。
置き場所
主に管理規約で定められている植物に関連するルールは、植木鉢の置き場所に関するモノが多いです。
戸建てであれば、建物が建っている敷地やお庭や駐車場なども単独所有しているので、玄関前や駐車場などにスペースが空いているのであれば、個々人の判断で自由に植木鉢などを置くことができます。
あくまで個々人が所有しているモノなので、法律に違反しない範囲で自由です。
その一方で、マンションは玄関扉の内側からは個人の所有物となりますが、玄関扉の外側からはマンションを所有する全員の持ち物となります。
そのため、玄関扉から外側には自転車や傘立てなどを置くことはできず、植木鉢も例に漏れず置くことはできません。
数は多くありませんが、玄関前の一部のスペースに専用使用権という権利が設定されているマンションもあり、その場合には傘立てや植木鉢などを置ける場合もありますが、どちらかといえば珍しいケースです。
置き場所の面では、駐車場や駐輪場にも同様のことがいえます。
駐車場や駐輪場の契約者は、駐車場代や駐輪場代をマンション側に支払っていたとしても、契約している駐車(駐輪)区画に停めていいのは契約している車輛などに限定され、植木鉢などの私物を置くことはできません。
駐車場や駐輪場の契約者全員が、契約している駐車(駐輪)区画内に自由に私物を置くことになれば、マンション全体の美観にも影響がでることになってしまうので、ルールで活用方法が限定されているのです。
そのため、植木鉢を置くことのできる屋外のスペースは、戸建ての方が多い傾向にあります。
育成する植物のサイズ
下階の一部に、庭が付いているマンションもあります。
この庭は「専用庭」といって、専用使用権が設定されているため、基本的に専用庭に面している居室の住民のみが使用できる権利をもっています。
また、規模の大きいマンションでは、敷地内に農作物などを育てることのできるスペースを有していることもあり、月額で数百円から数千円の料金で居住者に貸し出しをしているケースもあります。
どちらのスペースも、ほかのひとは使用できない“排他的”な権限を持つことができますが、専用庭に大木が生えていて大木をよじ登って二階に泥棒が侵入することや、農作物を植えるスペースに同じく大きな大木が生えていると周囲のスペースの日照に影響を与える懸念があるなど、良好な住環境が阻害されることが考えられます。
そのため、高さ制限を設けて1~2mまでの植物しか植えられないようにしたり、植えることのできる植物を限定したりと、戸建てのように自由にスペースを使用できないことがあります。
管理規約以外の植物のトラブル
マンションに住んでいるひとは管理規約さえ守っていれば、ほかに何をしてもいいわけではなく、近隣への配慮を徹底し近隣住民とのトラブルが起きないように、日ごろから気を付ける必要があります。
そして配慮をしていても、もしトラブルへと発展してしまった場合には、臨機応変に対応していく必要があります。
植物にまつわるトラブル事例
マンションにおいて、植物に関する近隣トラブルが生じることがあります。
特にトラブルになりやすい事例としては、水やりや害虫に関する内容が多いですね。
水やり
水栓がベランダに付いているマンションもありますが、ホース等で勢いよく水やりをしてしまうことで、隣接している住戸や下階住戸の洗濯物などへ水がかかってしまうケースもあります。
特に手すり付近で植物を育てている場合には、周囲に水が飛んでいかないように注意が必要です。
また、水の音は静まり返った環境では意外と遠くまで響くことがあります。
夜遅い時間帯や早朝に水やりをすると、騒音のトラブルになりやすいので、水やりを行う際には近隣の方への生活時間を考慮する必要があります。
近隣の方々が早寝早起きを習慣にしている場合には、夜遅くに水やりを与えないようにしたり、夜型のひとが住んでいる場合には、逆に早朝の時間帯に注意が必要です。
対策には、時間帯を気をつけるだけではなく、水の音がしなければ騒音のトラブルにはならないので、植物を高い壁に掛けている場合には設置している位置をすこし低めに変更するでも音の軽減につながるでしょう。
害虫
鉢で育てている植物から害虫が発生し、近隣の住戸に害虫が飛んでいくケースもあります。
特に、「観葉植物の土」や「花と野菜の土」などには害虫が好む有機物が多く含まれていることから、風に乗って飛んできた害虫が用土の中にたまごを産み、害虫が発生してしまうこともあります。
ベランダで日ごろから植物を育てているひとは、ベランダに行く回数も多く、害虫が発生した場合には初期段階で気づけます。
このトラブルの原因となるケースは、枯れてしまった植物をそのままの状態で、ベランダに出しっぱなしにしている場合が多いです。
植物が枯れてしまったあとに、発生源である園芸用土を植木鉢ごとベランダに放置することは極力避けるべきです。
ほかのひとが立ち入らないベランダの日常的な管理は、居室に住んでいるひとが行う必要があります。
窓をずっと閉め切っていると害虫の発生を含めて、ベランダでトラブルがあったときに気づけない可能性が高まります。
定期的に風を取り入れることや、新鮮な空気や日の光にあたる意味もかねて、日ごろからベランダの様子を確認しに一歩外に出てみましょう。
植物育成用LEDの光漏れ
植物育成用のLEDライトは、植物に向けて当てられていて窓から外に漏れだす光は限られているため、そこまで近隣トラブルへと発展しづらいですが、植物工場などで用いられているような赤いランプと青いランプをどちらも使用した紫色の光は、近隣住戸から違和感を覚えられるかもしれません。
もし紫色の植物育成用LEDライトを使用する場合には、屋外が暗い時間帯はカーテンを閉めて屋外に光が漏れださないようにすることや、時間になると自動的に電源が切れるようにタイマーをセットをすることで、近隣住戸から妙な違和感を覚えられないようにできます。
以下のモノは、LEDライトに限らず電化製品をタイマーセットできる製品なので、オススメです!
植木鉢などの落下
いくつもの住戸が上下の空間に重なっているマンションでは、時としてモノを落下させてしまう事故が起きます。
洋服やくつしたなどの洗濯物が下に落下することは、“マンションアルアル”ですが、これが万が一にでも下を通っているひとにぶつかっていたらと考えると、思わずゾッとするようなモノが落下することもあります。
これは植木鉢などのガーデニンググッズも、例外ではありません。
ベランダにガーデニンググッズを置いたままにするときは、大型の台風がきても飛んでいかないように、そして落下しないように固定するなどの対応が求められます。
枯葉葉の騒音
これは、個々人の話でも起きる可能性はありますが、どちらかというとマンションの外構部分に大きな植物を植えている場合に起きやすいトラブルですが、マンションに植えている木の枯れ葉が近隣住戸などに入りこみ、トラブルへと発展してしまうことがあります。
落葉樹が葉を落とすタイミングでは、落ち葉の回収に気をつけるなどの注意が必要です。
また、これは神経質なひとからの要望ともいえますが、葉が生い茂る植物が密集している場合に、強風がふく時期に葉同士がこすれる音が周囲に響き、騒音のトラブルとして発展してしまうこともあります。
植物のトラブルへの対応方法
近隣住民と日ごろからコミュニケーションをとり、「なにかご迷惑をおかけしていることがあれば、言ってください!」と自らお声がけをすることで、トラブルに発展する前の初期段階で、解決につながるケースが多いです。
それでもトラブルがあった場合には、トラブルに対して真摯に向き合って対応していく必要がありますが、管理会社が付いているのであれば、管理会社に相談してみることもできるでしょう。
ただ、管理会社は担当者によりきりなので、外れくじを引いた場合は、すこしハードルが上がりますがマンションを管理するための所有者の団体「管理組合」に直接相談をすることも対応方法のひとつです。
マンションによっては、掲示板や管理室に要望書などを設置していて、管理組合にお困りごとや要望などを書面で提出できる仕組みです。
これも選択肢のひとつですが、第三者機関に相談をしてみることもできます。
ただ、有償の場合があったり、相談内容によっては耳を傾けてくれなかったりと、個人的にこの手の話を第三者機関に相談をしてもあまり良い結果につながるイメージは持っていません。
最終的には、個々人の問題は個々人で解決する必要がありますが、無理難題をいわれているのであれば、無理に応じる必要はありません。
どうしても自分を取りまく内容だと主観的になり、客観的にモノゴトを判断できなくなっていることもありますので、ご友人や家族などに相談してみることも必須といえるでしょう。
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